作品

The Young Emperor's BloodBird Songs 20c悲劇天皇祐仁

プロセニアム アーナのためのPLANET PLAY NO.1
ホモフィクタス
ACT & AOI 劇団 1978.6 上演用台本 於300人劇場 作:芥 正彦


『The Young Emperor's BloodBird Songs 20c悲劇天皇祐仁』のチラシ

【1】

CAST

大正天皇
A
B

C
D
天皇(祐仁)
息子
女性 太陽神
皇大后母
皇后(妻)

【2】

女官A
B
C(処女)
D(処女)
高級官僚達及び政治家達
公安グループ
極左グループ
上流の家族


息子
妹A
妹B
祖母
女中
24時間営業のドライブイン スターファイヤーのマスター
その娘
ドライブインのボーイ

ト書き(一)

“余は墓地の中で精霊とその草を喰ってきた”
“世界は一つの共通な死を死んできた”──人類は実際はこの二行を、今でさえ適確に生きている。

一方、自己エネルギィ保存則というものがあるのだ。“見ろ、20もの世紀の間、我々人間は自ら軍事基地内の草のみを喰ってきた”と言っている隣人が、今、私を睨んでいる。

樹下に集いし諸国家の諸法体系が、我等がすめらぎのペルソナを、この世のものとも思えぬほど美しいものにしてきた。今こそ死は創造されるものであることを見せねばならぬ。ペルソナの自立だ。だが、「猿」はぶらさがっている、現実の樹上に。

すると“しっ、静かに、今きみの側らを、死者が、死者を葬う大葬列の一隊が、高速回転運動しつつ通過して行く”

デイリーニューズ(この星の上では0.00何秒間に一人といった具合に交通事故死亡者があり、父殺し、母殺し、子殺しがない日はない)「血」と「惑星」の関数について前消滅について

それでも人類の平均年令は?約32・6才の高齢である! 休みなく適確に、適度なスピードで適当な量の人間を拉致し去いつつ、ドラマ《差異及び因果律、そのサイン》は日々の泡の内で《同時刻圏》!!「人工爆発のエネルギィ」を供給しつつ、軍事的ドラマが軍事学的に進行中ではある。殺戮と蘇りのドラマ。

「霊魂は不滅だ」の問題について

その一

このとき人間は得てして二重に間違っているし、虐げられもしている。
霊Reiと魂Konとはまず全く別のもだ。霊Reiは因果律成立(光速による測定での差異の成立圏)とそのサイン関係内(言語)に属し、魂Konは、因果律の成り立ちえない、すなわち、同時刻圏(超言語)に属している。

(注※《愛》と《情》の違いは、相対性理論と量子論の違いに似ている。それらが人間=内部において、密接に補完し合っている点も)

間の表現という罠ならば、その一瞬(傍点:その一瞬)は科学、それも物理学であり、演劇ではないと言ってよい。というのは、ステージではあり得ないと思われているものが、いま目の前にあり得ていることで、ということは、成されるべきものが成されているということの、その今、まさしく今、通過する同時刻圏の、そこでの成立なのである。ところがそれが今、“すべてがなされ、なに(演劇)もなされない”ことの保証(傍点:保証)みたいなものになっている。

その二

レトリック:〈不滅だ〉というといい〈だ〉という発語のイディオムで〈不滅なものなどありえない〉と、逆暗諭を〈霊魂は〉の〈は〉のもつ〈切れ字性〉においてこの種のスタイルの悪儀は、同時刻圏を《知》にゆだね、それによって《知》の放棄ということをしているところにある。

その三

演劇上エントロピー〈涙〉の固有な固有時ジィで済んでしまう。

その四

ドラマでないものまでドラマにしてしまい、成就不能、ノイローゼとイマージの右往左往、意味への無意味なイタヅラの数々、霊の因果律運動を殺してしまう愚は、同時刻圏を明暗にすることで解決する。エントロピーをよりせばめ、ドラマ(霊の諸運動)とドラマでないものをすっぱり分つべきなのです。

その五

よって諸運動は、因果律圏、内部にあることのみ運動である。そしていかなる運動であれ、その実体形態は同時刻圏がその力づく(傍点:力づく)で、謎めいた仕種で決定している。

“人間”という感情、この“架空”の自治体系(傍点:自治体系)。そしてこのふしぎなエネルギィ(傍点:エネルギィ)。

一、親族の体系とは音楽の体系である!その一粒の涙に胎まれいる恐ろしい緊張、猛毒、破壊、そして融和と。

二、「女」とは「国家」をその情念において「暗記」している肉体をもったa頭脳b動物である。そして自己コピー能力をもったマシーン!

三、「女」とは、閉じるエントロピー体系と開かれるランゲージシステムの対応力、そのスピード、快感とエクスタシーへの一つの螺旋運動体。ステージにあって「女」のもつb事物(ルビ:アニムス)の消滅圏はそのオルガスムスにおいてa言語(ルビ:アニマ)の発生圏に変容する。

種の保存則とエネルギィの保存則の類似、その照応システムについて。いかなる精神衰弱も事物のエントロピーにおいてのみすべて癒されうる、ということにおいて「共産主義」という「妄想システム」が人類に宿る。

「私は生きているパンである。私のパンを食べるものは死しても生きる」同時刻圏を、因果律を語ることで告げているのである。世界形成への個が発するサインには充分たりえているが。が、ここにはいわゆる“感動”というものがない。
“君は私をのみ殺すがよい。一億には手をふれるでない”ここで言葉は、親族の、もしくは音楽の因果律にとどまっている。それだけの感動はしたたかにある。《原爆》=《天皇祐仁》二つとも一つの神話体系の中で融合しているから、二つとも同一のエクスタシーを誘う。

一九二〇〜三〇年の十年間に発生した諸大陸の重要事件をよく調べること。

水爆装置、太陽が、太陽たりうるためにひっきりなくしている核融合運動の、その放射エネルギィの地球への分配と蓄積分について、その表面での働き、エロス(=リビドーについて、もしくは“天照大神”について)(=人類生棲の環境ネエルギー、自己保存則のテオレマ、そのエロス原理)

宗教の代理人、核兵器崇拝、核軍備、核保有願望と偶像崇拝心理、色情の諸原理

悪とは、悲しみをその因果関係の連続性にしていることである。どんな喜びも連続しない。同時刻圏に属するがゆえに。
もし革命が存在するとすれば、いかなる詩人も一人の無名な殺人者にすぎない。よってポエジーとは一つの莫大な殺人機構とその世界である。これが「喜び」は連続しないことを保証さえしているところによる。Kon(魂)万物の一済合済はそいれを「喜び」(エネルギィ)に負っている。悲しみには自ら連続する力はない。だが“人間”の内部のかたくなさ──余の一七二㎝の塩の柱。惑星、余の涙の木。“余”の“色情”とは?

《悲劇》とは人間の緊張圏系が一つの“証明不能の犯罪”を行ってしまうことである──この証明不可能な犯罪の意味、その超国家性。

ステージアート、ステージにあってすべての物質は、スペクトルとしての言語に変容し、その言語体系によってドラマは自らドラマであることを証明しはじめる。これを演技、演出のステージシステムの保有といい、この力によって観客は、この単純なる謎“人間とは一体何か?”をいかにか知覚し得る。悲劇、この「人間という意識の〈特殊な緊張〉のもつ証明不能な犯罪の何か。」精神現象上のきらめきを放つ何かは、それによって共通のドラマたりうる。それをはじめて上演(目撃)しえる唯一の形式、としてのホール。

演劇とは、そのすべてを「いのち」を暗記することに依っている。
これに失敗すると、殺人者としての革命家ほどに格下げされるであろう。彼等はいのちが発する悲しみを暗記してるにすぎない事がすでに証明されてしまっている。

彼岸を唱えるのでなく、新しい此岸を描きみちびく事。


ト書(二)
あたらしき としのはじめのはつはるの けふふるゆきのいやしけしとど。
万葉集レジメ
かみでありしに
すめらぎの
なぜにひとと
なりたまひし
終戦のときの(読人しらず?)の歌

ト書き(三)
道化達のためのフォークソング 一「美しい原爆」


余が幼い頃、たしか6才の終わりと思う。思うというのはそれがもう過ぎてしまっているし6才というのは別に意味のあるわけでない。ただ余は、父母の寝室に入っていったのだ。より穠りあるオナニーするつもりで、というより原爆が遠くで美しいためいきをもらしたような気がした、というのが確かな言いかたなら


問 人類がヒロシマというおもちゃ屋を営みはじめてからどのくらい経ったのか?

答 三十三年

問 人類という戦争がはじまってとぐの位経ったのか?

答 アダムがイブにあってからずっと
ともかく、父母はいつも上気嫌で、伝承伝統芸能であるファックをしてみせてくれるのだ。余は“ねっ、きもちいい?”と聞いた。“おい、くだらんうそなどつきやがって、いつものようにあとで冗談だ、で、すまそうってんだろうが、そうはいかんぞ”。一体どうしたっていうんだろう、今日にかぎってこんなに気嫌が悪いなんて。神経の底には、集団性攻撃ヒステリー症候群ウイルスが、神がかりであばれていた。彼等の赤子、コピーたちは、そのベッドをすっ飛んで天体中を走り回ったあげく、わだつみ(傍点:わだつみ)とかになったという。
いま新しいケットルと新しいストーブがきたという
“一本のまき(傍点:まき)、もし燃えなば、たった一本のまき(傍点:まき)である。もし燃えて灰となれば、無数のまきとなるべし”プルトニウム


USアリゾナから、JPNヒロシマ経由、人類をこがして全世界へ

一方、いまだシーツの上にいる二匹の老いた猿を救おうと、古いKETTELは余といっしょに噴煙を吐いて、古い棲家の方へ飛んだ、植物園の葉一つゆるがさず満を持していた諸歴史は、すわっと通過した。余は失神した。


原子の井戸という井戸で、チリの爆発。アクロバットチームは、幾何学され尽した。つぎはぎシーツで、うじ虫さえはっている虫喰の万世一家のレースを、しびれた手でつくろっている二匹の猿、太陽光をさしこませるプリズム的使命を帯びている神々は、心理学の発展をおそれ、猿の臓器に隠れた、生物学的変身である。神々は日本脳炎ウイルスであり、脳炎が神々の隠れ家となっていた。


“はははっ、余に策を労しでもむだというものだ。一六〇〇フィートの上空に、美しい女性の声がひびいた。“みなさい、私はよみがえりである。私は、いま復活した”。息をふきかえした猿は、放心状態で、しばらくきょとんとして、ふたたび失神した。


アリゾナの砂漠の風に生れたレディプリエラと、Pオーシャンの泡から生まれたヒロヒト嬢は、いましっかり抱き合って、コロラトウーラをふるわせ涙にむせぶ、二つの涙腺は一つによじれ、いま、世界の資本主義をその声帯から絞り出している。二匹のレズビアンのメスネズミがTVの下にいた。そしてテーブルの上では諸条約が、神経症の諸軍隊を地球儀にしばった。いま、万物はまだ蒸気につつまれている。


翌朝、〈祐仁〉は、大声で、言った、“余のうぐいすはどうしたのか”、“余のいばらの王冠は巣づくりには間に合わぬ”


愛児達はてんでに朝食をむきぼり喰っている、すでに陽は高々と上がっていた。人間の血が流されたわけではない。標準語でもう一度言おう、“私は神ではない、王冠が見附からぬ、余のうぐいすはどうしたのか”


娘達がテーブルの食い残しをかまどにくべている、一転、陽はかききえ、空はかきくもり、洪水が首都をおおった、宮殿はひとり、水面下で、火炎を噴いた。


新ダーヴィズムを合成するKETELは、マルキイズムと魚の棲家になった。全戦艦は、玩具らしく、それにならった。星々は己がスーパーマーケットで重力を引きしぼり、互に自己潰滅にいそしんでいる。


一億の愛児達はいまだ、“大グループにおける攻撃性”なるを学んでいた、世界は叫んだ、“汝等、魚を漁るものよ、我が裡に入るがよい、人間の漁り方を教えん”


時に、人工爆発!の絶頂期でもあった、おまけに昼めしどきであり、世界はたき出しに熱中していて、誰も気付かなかった。いつも例外がいる、──祐仁である。


彼は極東のとある浜辺のあばら家に住んでいた。泣きながら、大洪水の波々を、ダンサーのように走り回った。


“貴方がたは、この禍いを恐れることはない、いま、貴方がたは、貴方がたの涙の中に入った。私に入ったのである”

洪水は、夕食時までにはすっかりひいた。竜巻となって、頭上へ去った。
頭ごと焼かれ、悪夢にうなされ、光は■■(編注:■■二文字判読不可能)となった。〈人間万才〉のうわごとは、バクテリア運動の笑いを模倣していた。人々は自分の世界経済のかまどに灰となって横たわって燃えている。

幼い余は、そっとドアを開いた。母の深夜に喜びにもだえる振動が、地軸をきしませ、ストーブもヤカンもこのときすでに猛スピードで核融合をはじめていくから


問 一体何を一億のたましいに脬育していたのか?

答 一億匹の猿の霊を、狂いごとのこだまを。大日本民族は、一大音響となってこだまし、赤子等は、八紘一字のうらおもてに、“なぜわれをみすてたまうか”と、よわよわしく発した。ようするに、二匹の猿が一匹の人間となって死んだのだ。


余は、両親の部屋の外へふみ出そうと右足をもち上げた時だ、誰かが、火掻棒で余の脳天を一撃した。


まるで似ていない女。倒れながらかすかに覚えているのは、大そう巨大な全人類が、一つの顔となって、悪意をひくひく運動させている。といったふうな──。光茫する眼球が、息とそのうなりが、余をねじふさんがごとく余の未来にまでおおいかぶさってくるような気がした、と同時に、ドアのすき間から突風のように、えたいの知れない哄笑が噴き入ってきた、空耳だったかな?


死を運ぶ河も河床をさらし、時間も己が子孫に死の烙印を押し忘れていて、ボイラーマンがすすだらけの煙突でオナニーのすすかき覚えのはじめだから、猿どもめ、せいぜい人目につこうというんだな。赤いしり(傍点:しり)、物のエネルギィをいじって、せいぜい100年そこそこのくせして、ボイラーマンめ、これでいいみせしめになったろう、一億は一斉に自己批判。


若い叔母のラジオが、“よいセックスを広める事こそ、よい生産的民主主義です。すべての悪いファシズムは、悪い神経症から生まれてくるのです”

要するに、どんな革命にもよくある既知主義還元という■(編注:■判読不可能)のバースディというやつだ、といいながら、叔母の結婚者がラジオを聞く。叔父は自殺した。


ほどなくに、家のあちこちに美しい孤児院が設けられ、10年経、刑務所と精神病院に発展す、すなわち父と母の棲家である。

余はそっとドアをしめ、ひとりまた自分の部屋に戻ろうと思った。このとき、余はふと頭上に王冠の重み!をはげしく感じたからだ、だれも気づいたものはない。

☆道化達のためのフォークソング 二
〈日本脳炎〉


むかしおれは生まれた。おれは知らない、おれのくるのを手ぐすね引いて待ちかまえていたのを。連中、ひたすらにやにや笑っていたのは覚えている。みんな変な病気を患ってたふう。両親を先頭に奴等は、一斉におれに襲いかかってきて、日本脳炎ウイルスをうえつけようとしたのだ。そこではじめておれは、自分が日本に生まれたことを悟ったのさ、おれは赤子心にかんばった、感染しまいとあばれまくった、ほうほうのていでさからった、だから二十四まで俺の脳は生きのびた、すこぶる健やかだった、どんな政治家もおれをみると恥じらった、しりをめくってなめてくれとさえ言った。気前のよさが災いして、いい気になってちょっと休んだのだ、日本民族がもうそこまで迎えにきていた。国家が手回しだけはよく、おれをまさにその日本脳炎ゆえに、一億人劇場で表彰さえしようというのだ。かくて万事は休した、そのあとどうしたって。


☆ある自殺演技者のためのフォークソング 三
〈おれはいま血しぶきをあげて回っている、水車そっくりだ〉


呪われろ、おれが生まれた日、壊れろおれが生まれた家、腐っちまえ、おれを最初に抱き上げた連中の手も腐っちまえ、最初にキスした連中の口、みんな腐っちまうほうがいい、おれが生まれてうれしいなどという言葉は、この世から消えうせろ、おれの誕生に関わった女も、その祖先も、全人類も、いっさいの宇宙はおれから手をひけ!いまおれは人類の暗い夜空に血しぶきをあげる水車になった、びゅんびゅん回れ、おれという呪いの火がいま点火したんだ、いっさいがっさい吹き飛ばすんだ、どんな獰猛な人間だろうと、おれの水車ほど無慈悲に回っちゃいない、やぶにらみの憶病人類の世界歴史の運命など今じゃおれのちっとも知ったこっちゃない、あばよ!せいぜいおまえらはおれの死ぬ日でも指折りかぞえて待つがいい、そしてその日を人間世界の祝日にしろい、その日こそおれという〈地球〉が人類の血しぶきをあげるのを止める日だ、あばよ!


☆フォークソング 四 道化のための
〈おおっ!情報時代〉


情報が情報たるには、その情報が自ら情報を生む情報でなければならないという。ユダヤ人達が野牛の耳をしばるみたくアメリカを牛耳ったのもこの真理にしたがったからだ。


〈祐仁〉新種の植物発見に原野を走り回っていた、わざとふざけている。元首相は、地下鉄売買をはじめて得意になった。バーのホステスなどは、土人の国で女王にしてもらった。なに?ホステスにかわりない?ある小説家などは代議士になってまで自分を情報しちまった、いまじゃ泣きちらして、じいさま相手のおかまだ、かと思うと、ある小説家は、腹切ってみせる、こいつも情報だと、ずい分悪い女にひかかった、いや、悪い情報にとりつかれたとみえる。いい年こいて、UFO万才集団があちこち。自分の子孫どものアホさかげんを見るにみかねた天照大神は、一億に向けて白状した“おれは女ではない”、“女から生まれたものでもない”、“おまえ達の時間で言えばわしは50億年ぐらいの歴史をもつ一ケの水爆じゃ、かかかっ”と言ってドアをしめ、外をまっ暗にしても、もうドアの前にも、人だかりはない当然ストリップも酒盛りもない、国家が儀礼としてTVを一台おいていっただけだ。だが、このTVときたら、自分で自分を映しながら、と同時に、自分と同じTVを映してる能力をもっていた。すでに一億台がそのドアを包囲した。余が何気なく、さびしいだろうと部屋をのぞいたら、そこに少し大きめなTVが一台ぽつんと同じ映像を映していただけ、ほんとうの事だ。

α(悲劇としての)

テーマ
☆祐仁にとって、いのちのテーマとは何であったか示せ
☆THE WORLD WARとは?その因果律を示せ


β(現代劇としての)
ブルーフ


☆所有者(A)の失綜(B)によって工事が停止、放置され、そのまま長い間33年聞が経ち、今では様々なもののけ(傍点:もののけ)(イデオロギー)の棲家となっているある建築現場らしい劇場、時々公安による不意のヤサ入れがある。

☆Aの父の発狂(C)と道化文化の発達。幻の宮殿(傍点:幻の宮殿)の成立、そこで父の秘密の死亡事件。

☆(D)と同時に“何者”かによって、ある青年革命グループ、妊娠中の女性を含む12人が処刑され全滅する。

☆(C)と同時に深夜、国家運命に関する激論が昂じた末のAの、無名青年達によるリンチでの自殺同様な他殺。

☆とある裕福な大家族の夕食に美しい青年が招かれ、その翌日、その家は崩壊してしまう事件


α 、β、は平行して暗諭としての無言劇が《プロローグ》として30分ほど
・映画によるイントロ
・小枝献納 めざめM(エピターフ)KK
・身ごもりの儀式(二つの水がめ)
・破裂
・気の遠くなるほどの退屈、近親相姦
・暗殺
・即位、追放、葬式
・酒宴、バッカス祭のような
・誘拐、強迫、そしてリンチ 殺害
・祐仁の「帰還」
本編は100分ほど、120分以上にはしないこと
エピローグ10分ほど
よみがえり、再会(全く無名の男女として)
ウェディング
ハネムーン
(カーテンコールでもある)
ファンファーレ
音楽、退場
ロビーにTVがたくさん PM9:40 END

PM6:30入場のはじまり、OPEN THE DOOR 玄関に大きな鏡、花輪、犬が数匹
受付(二人のヌード、二人の正装の男がエスコートする)
ロビー、地下のコーヒーラウンジでのビデオ等の遊び
客席最後部にオケ用架設ステージ
☆ファンァーレマーチ(五分)
阿倍薫指揮のオーケストラ、20分のテーマ組曲

☆たふたたびファンファーレ、合唱付き

《はじまり》プロローグ
照明はまぶしい。
ステージのそで、文字幕はまっ白。
処女の手で白い鳩(20匹くらい)が飛ぶ。

しだいに暗くなると、スクリーンに自作の短編映画がはじまる。女性の顔、ポスターがアンナ、マリア、ヒロヒトの順で(カラー)映される。次のカットで小さな地球のカラー写真、地球がしだいにまぶしく大きくなる。一転まっ暗(禁煙、非常口のランプも)

静かにタイトル入るPM7:00
悲劇《天皇祐仁》(ルビ:ひろひと)の黒地に白ヌキの活字で入る
しばらくの間無音。
(映画音楽やメディテーション)
俳優達(スタッフ含む)の短いシヨットと名前(各自の個性に応じた映像の事)全員が迎賓館前の並木道を歩いている。
樹の葉のざわめきのクローズアップ。
突然フィルム切れ数秒、無音、かつ場内ふたたびまっくら、スクリーンにおぼろげな、マリア、アンナの顔しだいにはっきりし、地球のカラー写真、しだいに大きくまぶしく白に近くなる。

タイトル
白地、黒、ホモフイクタスACT&AOT劇団のプロセニアムアーチシリーズ、プラニットプレイNO.1

ステージに、二人の処女が(リナ、リサ)逃げ遅れた鳩を殺している。


《小枝献納の儀》
四つの石膏のつくる四辺形の中央に、女性原理のシンボルとしてアオイ立つ。
男神による小さな血のついた枝が、上手の板づたいに捧げられる、大神は妊娠しているふうだ。
☆効果音のささやき声(鳥のさえずりに似ている。)がホールに満ちる。
きれいなコロラトウーラ風なボーイソプラノのささやきに近い笑い声。
風が吹いてくる。(シンセサイザー)


《小枝の注視》
鳩が遊んでいる、ステージに人だかり、と、油汗の出るほどの気づまり、と、四つの石膏の爆発(母なるエネルギィ、核分裂、及び核融合の象徴となる)

ト書
「天体は父なる一本の樹、諸民族はその金の技」我らが万世一系族はその血の枝
人々、鳩がとび出るように我勝ちに右往左往、倒れた人を踏んづけ猛スピードで散って行く、と、ステージひどく暗い。
女達、点々とろうそくを灯す、照明はろうそくのみになる。

A すめらぎは花婿となってきっとあたしの所へくるわ(エロチックな声)

B いいえあたしが今日のすめらぎの花嫁だわ(エロチックな声)

C あたしよ、(泣く) (3 人けんかする)

D あたし……。朝まで起きているわ、(一人ささやき声)(なんて遅いんでしょう、などといいながらAから順に次々に眠りこんでいく。(退場))Dが、ステージに一人のこり、遂に、花婿の祝福を受ける激しい喜び(これは実際には、Dのみた幻である)
つづいて

《身ごもりの儀式》がはじまる
アオイ(太陽女性神である)花道から水瓶を持って現れ静かに舞う、上手と下手を往復、それぞれに2回ずつ水を注く、水が注がれるたびにオーケストラは(A、アイラ一、スピリチユアルユニティのよう)二手に別れたコーラス達によるするどい叫び、2回。と、劇場のドアは、はげしく足で開閉され、不意に“客電つけろ!”の太い現実の声
場内しらけたあかるさ
音楽も止む、ハンチングとスーツの男6人
アオイ止まってその連中を見る、陰毛がばれる。

ステージを検問しに駆け上がる四人
証拠写真(フラッシュ)を撮る
あとの二人は観客に職質をはじめる、
アオイ、パッと逃げる、割れる水瓶、追っかける四人(上手袖裏から「なにすんのよお!止めてったら!」のどなり声)


阿部の短くはげしいアルトソロ
と、ふたたび暗くなり、オーケストラも元通り、ステージ合唱隊でうまっている(客電消える)
《サンライズサンセット》の大合唱
合唱中、合唱隊のうしろに大テーブルの用意。合唱隊去る。

《破綻と汚点、AMA NO IWATO(天の岩戸)の祭スクリーンが上がる。と、アオイ裸でかくれている。縛られているACT》


野外の結婚式みたいなシーン
ACTいましめを解かれ、料理が運ばれる。
アオイの着衣が運ばれる。
卑わいな飲めや歌え、UMEZUのダンス、どんちゃん騒ぎ大喰い、キッチェの道化


創世記、荒ぶる男神等朗読
古事記の朗読
花嫁が奪われる

花婿が殺されかかる
最終的にAOIのボーカル“スーパーマン”で一つにまとまっていく。
と、花嫁、花婿各々犯され辱しめられ、あげくの果てに、すっぱだかでステージから追放、と、どんちょうが降る。


でも客電はつかず、すごく暗い
客席から君が代
君が代にあわせてきわめてゆっくりどんちょう上る


「祐仁、母の禁忌を犯して、脳炎の父と対面するの章」
《現代である》(a)女性達6人が編物をしている、祐仁であるACT通過する、女性達、一斉にオナニーをはじめ深い溜息をする。
大きな鏡の前で一人の男が、なにかに一々、ひどくおびえながらTVを見ている、ホール全体は今、このブラウン管の輝きのみ、女が入ってきてTVを消す。
(この二人は前にステージから追い出されたカップル)
「ねえ」と男を誘いベッドへ、男はまだ怯えている。再び男等(劇場警備隊員)が入ってきてファック中の男女をベッドにロープでぐるぐる巻きにして拉致しさるか、あるいはファックしたまま惨殺される。ドアでも、ずっと“君が代”の合唱は続いたまま再び、どんちょうが急速におちる、どんちょうがおちると、すぐステージが眩しくなる。いよいよ宮殿の中だ
(b)4人の男(腕に木枝、一人だけ左腕、胸に血のしみ)による散らかし放題の“新聞読みごっこ”(十大新聞)部屋中が紙くずの塊だらけ。
(c)ダンス“ハエ喰い遊び”(バッハ四台のチェンバロによる協奏曲)
新聞紙の山の中で四人AOIに群がり犯す、祐仁通りすぎる、四人逃げる。

AOI 大正の妻、おまえはここへ来てはだめだと言ったのに、おまえに父との面会はまだ許可してません、今私、朝の体操を終えたところよ、のぞいてはいけませんね、(祐仁、さっといなくなる、めくばせする父)祐仁の父と母の二人だけのおそろしくつましい食事、父はパンクズに対してパラノイア的な挙動がしきり、父は、はげしく苦しみ出す、母はニヤッと笑っていなくなると、入れ替り祐仁再び登場、胸にまだ血はなく、腕に枝はなく、何かきれいな〈花〉、苦しんでいる父の腕から4本の小枝を抜きとって花瓶(4ヶのヌードの女性のパンティに)一本ずつさす、自分の花を父の左腕の包帯につける、父はひざに接吻、父、息をふきかえし息子を撫でながら深いためいき、4人の女性、5メートル程、離れた所で、一塊になって泣いている、父、自分の頭にのっている鉄条網の輪をはずし、ひざまづいている祐仁のそれに乗せる、と、母が入ってきてそのシーンを見て激怒にかられ、四人の女性達を、つらあてに小枝でムチ打つ
──(祐仁に)おまえはかあさんの禁を破ったね。(泣く)
(女性達をムチ打ち続ける、止めに入った祐仁) (祐仁、父のまえで、立ったまま、母を犯す。) (既に、王冠の無い父オナニーする、) (四人の女性、恥ずかしそうな父を、その身でかくす)
公安グループ。母(たたきにめされ)と祐仁を上手にやさしく拉致、父と女性達を手荒に下手に拉致。

A(A:○)一瞬ステージ無人 再びサンライズサンセット大合唱と合唱ハミングにかわる。両袖から父と息子猛スピードで走ってくる抱き合う。

面会1
「ヒロヒト」と父(父は狂者を装っているらしい風でもある)

──おまえがわしの息子か?息子か(ひどく興奮している)おまえがわしの頭骸の中で、色々な独楽がクルクルと回っておる、息子よ、今、余は、父であることを止めねばならぬ、その理由はいっぱいある、一つが、万世系という見えないコマが嫌いなのだ、これは、何時、殺戮の大車輪に乗れるか知れたもんじゃない、うかうかできん。ジュノサイダーという名のコアを持っているコマだ、今、そいつは、わしに一ケのパンに見える、血しぶきは無い……だからな、だからパンこそ万世系だ、血じゃないのだ、血しぶきではない、おおっ、見ろっ!余は、さっき、たらふく喰ったにもう無精に何か喰いたい、喰いたくてたまらん、これというのも世界というパンを世界自らが、ひっきりなく奪い合い、むさぼりくらっておるのだ、もっとも、わしの頭脳の中じゃな、世界自らが世界という自己のパンを喰ってしまいたいという世界的欲望が世界中に発生している世界が自己回転しているんだ、へっへっ……だから、わしは今、腹がへっているのだ、なのに見ろっ、わしはセックスだってしたくなったぞ、それもさっきしたばかしというのにな、これは、おかしい、どこかおかしい、わしはこんなに、痙攣しとる、やがて、この痙攣も自己回転になっていく、わしは、一つのスピード、おおそうとも、不毛極りない回転自らが回転を喰ってしまうという、これこそ自己増殖する世界だ、おまえは、そんな眼でわしを見るな、おまえがそんな眼でみると本当に狂ってしまいそうになる、狂っちゃいないよ、おまえ、わしは狂っちゃいないんだよ、いない、信じておくれ、(抱き合う)もっとも、わしは今、この極地に30万年以前から住みつき進化した一匹のサルを知っているよ、30万年の幾星霜の間、狂ってきているこのサルとも人間ともつかぬ、わしの大脳で思考する世界を狂っておるのだ、日本国家現人神のある天皇として言っている、でも、おまえのか弱い父としていっているのでもない。そこは、おまえも少しは、しんしゃくせにゃいかん、わしは神なのかどうなのか、わしにも解らん。ただそうなっておるだけでな、もっとも、わしの考えで言えばわしは神などではない。強いて言えば、日本国家というわしの血の池があってな、その真中で自らフラフラ体操している一匹のぼうふらがわしだ。本当にそこいらにいるのだ、よくてめでたく蚊となって大気を飛び回ることくらいのものだ……もうよいこんな話は。わしの生まれつきの脳炎だけが、わしにとって真実なのだ、これが無くならないうちは、わしの心をおまえは気づかってくれにゃいかん。これは、国民全体のまだまだあと15年間は大丈夫だよ、そんなこんな疑わしい父などいない方がいいのだ、もっと恐ろしい話をしてやろう、おまえは、わしと違って大事な人間らしく祖父さんからの教育しか知っとらんだろうからな


──パパッ
──パパッなどというなよ、つばきが飛んでくるではないか
──陛下には、世界は己がパンを自ら喰ってしまうという世界構造になっているというのですね
──早い話、おまえよ陛下は自滅回転をしはじめているらしいのだ、これを防ぐにはな、自滅す既に、そこらへんのただれた石ころから無限個のパンを産み出すぐらいの何かが起こる、一刻も早く起らねば、起す必要があるのだ
──父さん、いや陛下、ちょっと待って下さい。道ばたの石ころからたくさんのパンをですって、それもたくさんの!
──そうだ、それが出来なければな、これこの、ほこりにすぎん今朝喰ったわしのパンの、パンくずから全人類をいやすパンを造り出さねば、わしの心をいやすことはできんのだ。わしの頭脳のただれをいやすことはできん、息子よ、わしだってわしの脳炎から治りたいのだ、脳炎というただ一つの気持ち良さだけを頼りに生きていたくはないのだ、それぞれは、ふろう者と同じだものな、分るかい? 世間というのは脳炎には、しごく入りやすく出来ているゆうれいなのだ、でもわしだってな、わし全体をすごくシビアに爪の先から髪の毛の一本一本すべてと、生きている人間の真実に合わせてシビアに生きてみたいのさ、ははっ
──父さんは既に充分にそうなってます、現人神なのです、こんなにつらくシビアな職業は世界に二つとありませんもの
──わしは、ちりがみか道化で良いと言っている……いやこんなことよそう、日本脳炎のウイルスが国中にびんまんしているよ、余が望んではいないよ
──現人神とは共同精神錯乱のコアにすぎないのですか?
──そうだ、殺人のイデオロギーだ、わが道化の系譜は世界的頂点を示すものとなる、現に人間を余にたずねても無駄だな、わしを現人神というさっき言ったことは聞かなかったことにしよう、道化好きの連中本来のおまえの殺人者共に心を悩ますな、第一、わしはこの弱い頭と体でな、そう長くはない、その上わしは、今の世界構造上そして我が国家構造上、神とサルとの二つの狂気をこの一つの体で使い尽くして生きねばならんのだ、だが、おまえは違う、海へ、宇宙へ、おまえは飛び出る、それは今に解るだろう、最初、おまえは神として生き、次にサルを装って2600年、この世と血のつながっている人間として生きる、我が家のタブーが権力となる為に、それまでには長い苦しみがある、どこかの国の造物主は自分の働きをいかなるチリにでも与えている、何故、チリから人間が出来たか?おまえもそれをする、そしてついに如何なる人間にもおまえと同じ命を与えることをいう力なのだ、人間は遅かれ早かれその秘密を探り出すのだ、パンというのはな、そこ等へんのつまらんチリから一組の人類が生まれ、その一組から、たちまち何十億カップルという家族が爆発にのって造り出されることとも似ている。よいか、その爆発だ、おまえはと肉体の内で爆発させ、人間というこの心の大運動をして、自分の肉体を分配せにゃならん、そして今、これが大事なことだ、よく聞けよ、だがそれは道に一組のカップルがただ何十億というカップルを殺し尽くすこととも似ているのだ、この二つを旨く組合わせば、わしが言った夢みたいな話もやがて、夢ではなくなる、どんな夢でも夢であるがゆえに、夢ではない……。おい、聞いているのか
──はい、それでパパ、天皇がもし自分のパンを語れば、あるいは自分から世界を語れば世界は大戦争に入るでしょう──国家には恐ろしい革命が起こるでしょう
──全人類が一人のアダムあるいは一人の天皇となってイエスの様に自殺するのだ、もしそれが出来れば人間は、己が為に全宇宙を一つのパンにしうる。それまで殺し合いは続く、早く人に爆発の爆発力を上回る石ころの爆発力を探し出せ
──それは一体どんな爆発力ですか
──我が母のあの疑り深い心の爆発力だ!タブーそれもおまえは、息子ゆえに探り易いこの爆発力をな、これらの石ころの中に監禁し、ひいてはこの星にしかと植えつけるのだ、わが母のエネルギィをその国家に植樹せよ、さもなくば、日本脳炎患者がおまえの一億人の赤子は殺人者、以外にはなれぬぞ
(このとき祐仁、母(いまでは妻)に、父と合っていることを発見される) (照れかくしに二人、新聞をみながらハエとりごっこ)
──父さん、父さんを誰がつくったの!
──わしか?わしだ、おまえの演劇はおまえでなく演劇がつくった、演劇がウイルスみたいなものだ、わしわな日本脳炎というウイルスだ、このウイルスがつくったのだ、死ねばな、生まれる前がそうだったからでも奴等の厚生省がすっかり消毒して予防注射してみんな殺してしまった、演劇は、その原因はこれでわしと一緒に死んだのだ、息子よ、このハエは誰のもの、このハエはハエそのものではない、人間をハエにした人間のもの
──じゃ、ウジ虫は誰のもの?みんな父さまのもの、父さんから同時に自分と同じものをもらってハエになる、ウジ虫みんな父さんを吸いとってく、そしてみんな……
──では、謎だ、五匹のウジを国民みんなで食べたりすると
──わかりません!
──まだ何も言っちゃいない。12カゴのウジだ、溢れてくる
──7匹のウジをみんな……
──わかりません!
──おまえもせっかちだな、7カゴこれが正しい数字だ
──不思議だなあ、ふしぎな事です
(猿が反転する、とステージ両サイド花であふれ、中央にテーブル。)


3E+祐仁
E 、Er、E■(編注:■解読不可能)それに《祐仁》
──父上の発狂はどうだ?
──父は神であることに生まれつき慣れていないのです。ですから父はいまの職業が好きでないのです。例えばハエとりごっこのような、それというのも神という職業プランをよく知っていないのですもの
──……
──人間は人間でしかありえない、父は今、猿のように発狂し(悲しむ)
──人間は第一発狂したりしない、わしは彼をよく知っておる、彼は正常そのもの
──女共が、よこしまないろを好み、もって生まれた悪しき気紛れで道をひん曲げつづける
──おまけに国民全体が日本脳炎のウイルスにおかされているときている。彼の症状は歴史的に絶望的だ、もっともどんな絶望でもそれ自体はいつも最大に正常で、はあるが
──歴史が病気なのだ、まっすぐなものを人間がひん曲げる
──神がまっすぐにつくったものを人間がひん曲げるわけでもない、神はもともと曲線でまっすぐにえがく、人間などに何が出来る、我等にはできないのだ、だがな、我が国家の神は所詮、核融合の装置なのだ、天照大神にまっすぐというものがない、光の陰部にすぎんのだから、一億人はこぞってくだらん夢ばかし見おっていい気分になっておる。

祐仁 世界を制覇したいなら、まず己が魂を制覇するがいいと父は申していましたよ
──おまえの父が国民に代って発狂している間は国民の方は戸籍を保つだろう、ああっわしらが深い訳あって総てあそこまでお狂わせ遊ばしたのだ
──だがな、おまえが父に代って新しい天皇になると、逆平均は保てない、国民はそれぞれの発狂のターゲットを失い自分自ら発狂していることにうすうす気付く
──父は言っています、「私を尋ねるものは無駄だ、それよりもそこいらのアメーバの一つでも尋ねるがいいと」そして「私の為に心を悩ますな、入ってはならぬ」と
──その他には?
──「世界に恥を負わずに、辱めを受けずに棲むるところはない」「誰も無知を祈ってはならぬ」 「時が至ったらおまえも自分のいい分は言うが良い、それまでは沈黙していろ」そして「救う事もできない、神を信じるのはバカだ」ともいいました。そして「わし以上の辱めを己が国民からではなく世界全体から受けるときがくる、そのときを逃すな、その時は自分の言い分をきっちり長くもなく短かくもなく告げるがよい」
──祐仁、君はこのことを友達の他に誰かいいましたか
──いいえ、まだ誰にも
──そう、それは良かった、陛下は、おしばいがお上手なのだよ、

面会2
3E+父+息子
父、病室から会議に入ってくる
──男淫売のボスなど嫌になったねえ、わしがサービス業に耐えられると思うか、(──天皇程の神聖サービス業は世界にはないのだ、天体広しといえどもここいらだけだ)それにしてもわしは神聖すぎているな!神聖というものには力があるのだ、見ろ、身体に重力が付き過ぎてな、ぐんぐん増殖しとる、殺人者が生れ、消える恐しい重力の棲家、この、ほれ、こんなだ(全的で、力んでみせ、身をブルブルふるわせる)このままではブラックホールになってしまうやしれんぞ!(──日本中の殺人者、いや世界中にいるすべての殺人者はみんな天皇家のご子孫でもあるのです)これというのも、おまえらのような心に心の心棒がない、心に心の男根のない、ペニスにむしゃぶりつくだらしない、しどけない気弱ですらある気紛れな不道徳な被造物に何重にも包囲され続けすぎたのだ、わしだけじゃない、わしのじいさまのじいさまのじいさまのじいさま……じいさまがここいらに国家をつくってからずうーとだ、うんざりだ食糧を恵んでもらうだけでも変に難儀だ、これがひどくわしの自信を失わせる、こんな我慢ならない事!わしは働きたい、天照す水爆装置の星のもとで働きたい、正式にセックスして正式に子孫をつくりたい、わしはこの世のどんな職業だろうともやってのけられるぞ、そのくらいはピンピンしとる、8時間の労働など、いまからだってな、神聖サービス業!などというのは例外にしてもらいたい、人間24時間神聖なだけではつまらんのだ、わしは一億に食糧をめぐんでくれなど頼んだ覚えはない、わしがそのくらいの革命をしないで24時間サービス業を働らいているといえるか、どうせ24時間労働ならことわりたい、わしも芥正彦のところへ行ってセリフなどなくて良いから役者をやってみたい、とさえ思っておる!どうせなら乞者になってやるのにおまえらは、わしやわしらの祖先をずっとひどい寂じいところにおいてきぼりにしてきたのだ!わしの今迄の唯一の仕事といえば、只物を恵んでもらい、女を恵んでもらって世継ぎをつくることだった、わしも世継は欲しかった、だがそれも終えたのだ、そろそろわしを殺せ、でなきゃおまえらは人殺しだ、それ以下だ、猿殺しだ!おまえら猿しか殺せん、(──いや、そのぎゃいぎゃいわめく猿を何処からみても人間そっくりにみせているのはわしらだよ)猿しか支配しとらん、(──わしらはわしらをさえ支配できんのだ)猿が持っている心の人間はわしがわしの心で支配してしまった、というよりは催眠的にだが、おいっ、たまには人間を人間らしく人間のまま殺してみろ!ではじめにわしを殺ってみろ、この猿殺しめ,犬殺しめ、猿の惑星のゴキブリ殺しめ、つがいになった嘘つきめ!よし解った。わしは一生働いてなんかやらん!どんどん神聖になってやる、革命粉砕にとてつもない威力を発揮するジェノサイドマシーンになってやる、まあともかくな、こんな気配を察してからはおまえを産んで、つくづく良かったと思っている、おまえらウジ虫がわしの養分をすっかり吸いとってもな、吸いとれば吸いとる程わしはどんどんジェノサイドマシーンになっていく、もっともっと悲しい力を発揮しえるものさ、和解するなら今だ、今をおいてない、わしの息子を同じサービス業などにすれば、世界全体はわしという一ケのジェノサイドマシーンに落ち込むだろう
(──どうも演劇好きの猿はすぐ気がちがってしまうからほとほとあつかいづらい)
(──陛下はそれにしてもおしばいがお上手というものです、単なる猿ではなくなりそう、恐ろしいことです)
──わしはまだわしというマシーンに器物破損しか認めさせておらん、人間、人殺しせずに生きる為には無類の愛が不可欠だ、やがては人殺しを職業にしなくてはならん、わしの24時間労働!おおわしの木々、草、花々のエネルギィの変容、素晴らしい無名の命の殖産計画、すべてこの世のものではなく、すばらしいわしはまだ人殺しをせずに生きているのだ、おおっ、尻や股間がぐっしょり濡れてきた、へそがかゆい、母さん(体内生理のメカニズム)が、わしをご心配のあまりこんなにも愛撫なさいはじめよった。母さんが母さんがだよ、母さんのささいな嘘がはじまりで莫大な人間をわしは殺した、(また狂ってしまわれた)猿どもは欲望ゆえに猿どもを殺した、そうやって母さんがつくるパン欲しさに気が狂いながら人類へと変化してゆく、ついに人類が一ケの嘘つきの塊になって余のジェノサイドマシーンにおとし入れられ、いっとき美しい嘘とその夢を追いかけながらそのウイルスの一つまでが死滅するまで余は生きる、あの世この世にもにもふさわしい共通の新しいサービス業が、おお、わしはこれが心配だ、息子よ、遅かれ早かれおまえはわしの職業を受け継ぐだろう、その時は職業としてそれを働いてはいかん。職業として働けば、おまえは人殺しのボスにしかなれぬ、いやそれでは人殺しにさえなれん、単にノイローゼを患う猿どものノイローゼゆえの天皇で、しまいには猿殺しのボスにされてしまいかねんからな。よいか、よく聞け、俳優としてその職業を演じるのだ。演じるのだ、わかったな、一億人収容のあの世この世が一緒くたになった劇場でな、その劇場外に向かって演じつづけ、その最後に劇場外からやってくる一番の人殺しがおまえに会いたがる、そのときその人殺しに、ただ一人で会いにいけ、そしてこういうのだ、このセリフはもう決めである、「わしはおまえを待っていた人殺しよ!私を殺せ、だがわたしの一億に手を触れることはならん」と覚えておくがよい。
──陛下!
──陛下などというな、わしは単なる乞食だ、おまえらに恵んでもらっておるのだ、おまえらのつばを吐きかけられているぐらいだ、「陛下!」などといわれてな


面会3
父+死+息子
閣議室にて
(びしょ濡れである、ふるえている) (頭から蒸気がのぼっている) (できるだけ笑おうとしてひどく醜悪なひきつれ顔)
──おい、おまえ達、わしの息子になにをひそひそやっておる。何か新種の病気でも、そのウイルスでも発見したのか、ふん出来っこないわい、ざまみろカンカンだ、それとてわしが、えっ、わるい病気だとでも言いたいのか、えっ、何故黙っている、ふふっ口が裂けても言えないのだ、死にたくないからな。うんざりだ、くやしかったら「おまえは狂い天皇だ」と言って死刑にでもされてみろ、わしにしたって好きで“神”になってやってるんじゃないぞ、こんな中心の無い部屋にいれられてベッドの位置を決めるのさえひどく難渋するのだ、ああでもない、こうでもないと、一晩中わしが動いているのを知らんのか、一睡もしとらん、全体はひどく目覚めっぱなしだ。それに全くひどい女中共だわい、世界が心棒を失なったからなあ、すぐにおしっこを飲めの、その太いのをここに入れろだの、もっと動いての、裸になっていちゃつきゃわしの女中になれるとでも思っている、海外から入ってきた思想のせいもあって、わしの部屋を超一流の売春宿だと思っておるらしい。国家の財政をどんな赤字にしてもよい、ちゃんと2600年の伝統とその教育を仕込んでからわしの女中にするがいいんだ、よいか女性たるものみだりに日本民族の女性どもはだ、その体液を外に放ってはいかん、いいか!女性たるものすべからく生まれ落ちると同時に、初潮をみたものが外へ出かける時はすべて、すべて大型洩瓶の中にぶち込んでおくのだ、余のシーツを濡らしてばかりいて余はかなわん、すべからくその頭に洩瓶をくくりつけてのち、許可を与える様我が国家の女性にかかわる憲法をすべて改正するのだ、これに違反した女性は何であれ現行犯としてその場で処刑してかまわん、余のシーツをそれの血が清めるであろうから、おい、おまえ達すぐ閣議に入って明朝の日の出と同時に発効さすがいい
──パパッ、パパッ
──おお、エロチックな!パパなどと言うな、パパなどといってツバをかけるな、接してもらさずとわしは言ったぞ、ちくしよう、もう以前程わしはおまえなんか信用せんからなあっちへ行け、そしてなゆっくりと5メートル以上離れろ、宇宙の水分と陰部エクスタシーの不出来なできものめが、余の華美なウグイスはどこだ?余の烏帽子(えぼし)は燃やしてしまえ、(ひたたれは?すいかんは? )それもみんなだ!余の花時計花冠はあれはいまどうしたのだ、おお、北々西の風が吹いているな、一億には火炎警報を出しておけ、南からきたもう余の鶴と亀は死んだか?それともUSAへ逃げたのか?USAではドライブインのゴミ箱からさえ何億というチリが生命のままこぼれ落ちているという、ああ、今夜も又ねむれない、わしの体が原子炉の様に熱い、わしもずい分セックスマシーンにされていたからな、だまされていたのだ、母上に、おまえに、おまえら全部に!いずれわしは、わしの最初の家のその母屋の屋根上で、太陽の真中で焼け死んでやる、わしの家とその心、黒点がいっぱいふえるだろう、新しい氷河期をここいら送ってよいかな、日本中をカチン、カチンに凍らすのだ、殺意の歯車が八紘一宇でフル回転するだろう、地球など人類の血しぶきあげる、ちっぽけな水車にすぎんのだからなあ、今の余の心程に凍らしてやる、余の花時計つき花冠を爆弾製作所に隠した奴等への復讐だ!みんな爆発してしまった、USの真珠湾でもおまえの首飾りするのがいい!日本は凍りつくのだからな、役所という役所は自治省だろうが国立病院だろうが、わしがな、TVでコンピューターだけで運動させといてやるわい、わしがいなければ、おまえ達は国家でさえない。日本民族でさえないのだからな、それに日本人というのは逃げられんのだ、日本から、日本人の歴史や記憶、性分というものはあまりに隔離されつづけてきたから、日本人の体を一ミリも外へ出られん様になっておる、ダーウィンもびっくりだ。こんな楽なことはない、うっちゃかしだってかまわん。それにな、わしはまだまだすめらぎだ、おまえらの様な精神的赤子はTVとコンピューターでわしがこの頭脳でガッチリまとめられるというものだ、それにおまえらがつくり上げたのだが、わしの血や肉がみんな聖なる神のものでさえあるのだからな、人間がどうして人間を欺しえるか、人間がどうして人間に欺されうるか!やがて解るだろうに、おまえら宇宙の水分とウイルスの塊が人間というノイローゼに患っているのだ、そのノイローゼには名前がある、日本という名前なのだ!はははっ。余を日本脳炎というな、わしら全部がもうそうなっておる、ここいらに歴史があれば、その長さだけ、そのノイローゼを患ってきたのだ。だがな、いま世界でなにかが爆発してきている、新しい風がわしらの病室にも吹き込んできている、その風はわしより清い、みんな悪いものはその内から湧いてくるし、外からくるもので悪いものはない、そもそもわしらの祖先でさえ、外から清いものとしてきたことになっているし、事実そうなのだ、客人だ、まろうどだ、まれびとの来れり、おまえは言った、“まれびとの我等にあり”と、わしは嘘の光だった内から生じる害悪がすっかり消え去ってのち、外から風はそこへと、とどまって新しい命となる、それも、しばしの間だがな、おまえ達は光を迎え入れる支度にせいぜい走れ、血税を吸い上げるヒルよりおとる虫けらどもめ。(また陛下は革命家になってしまったわい) (それとも我々がささっと睡眠宗教家にでもなることにしようか) (父をないがしろにされてはいかん)
──わしの死こそ光であろう、それが息子と一億とをゆくゆくは今よりいっそう考えられぬかたちで結びつけ合うのをおまえらは目撃するであろう。そこでは花が一定の約束で咲き誇るように、言葉が咲き誇り、歌い合うシステムが生まれている、それがそれでありそれまでに、そうなっても青年殺人者が、その単性性殖を止めない。この家のくらやみからは台所からゴキブリが撲殺されないのににている、殺人者は這い回り、転び回るであろうがそれはみな女性どもの情念の中を這い回りとびまわる観念のなせるわざじゃ。それらの源は、わしという存在のせいだ、わしという美であり、その表徴である、又、それはわしという一ケのちっぽけな遊星の放つ殺人光線、美の美において組織され、新しい風にのってこの家の下僕等となっていく、人間の棲家で殺人者は下僕であり、下僕は下僕である、それ以上でも以下でもない、下僕等を恐れてはならん、それよりもわしの生涯が全く秘密にされ秘密のままわしは死ぬ、このわしの死をこそおまえ達、恐れよ、これ以外に“ノイローゼ”だからな日本民族の心など、祝福される道はない、私の道をまっすぐにせよ。(ああ陛下のナルシズムもいいかげんですな)猿などは客席にすわっとれ!この猿め!30万年前の生き残りめ、わしは2600年前のお客だ、余のナルシズムを死絶するまでもてなすがいい。おまえらの様な不細工な=化物に囲まれているとな、わしもエホバの身代わりをしたくなる、余自らエホバを演じようか、そうすればこの劇場も世界もみな犯罪者の巣窟になりはてるのだからな、今よりも正直で気持ち良い程だ、おい、オナニーでもしてやらんか、(ステージで本物の混乱が起る、客席ではニセの混乱が)
みなさん!おしずかに!おしずかに、あわててはいけません、もう一度繰り返してみましょう。

面会4
3E 父と息子(テーブルが会食用にととのえられて)
(父上の御症状はどうだ?から始まる)
(その前の相談)

──ゆめゆめ内密に とにかくマスコミに盗聴されたりはいけません。報道管制をしかと、あくまでも生きてあられ気高い歴史上の神に等しいお客様であるのに
──我等が真の神 真に全宇宙のあらふりをあらぶる神のことはおくびにも出さぬよう
──人が生きながら神にならねばならないものすべて言語の未熟な次元では不可欠な不調和な避けえぬドラマゆえに悲劇は内密に内密に
(その時声)
──時が致れば神らが神の荒ぶりを一気に発しその間のノイローゼを治療するのだ


(祐仁は丁重に拉致されていなくなる)


──今日はなんとも感じが良い体中がいつになく調子がいいぞ


(大臣達去る)
(長い天気予報のアナウンス)


おはよう!やあ おはよう 諸君の調子は?なんともあいかわらずひん曲がっているなあ 真珠湾は燃えているか みんなハエとりごっこでもしようか 余はずい分と上達したよ いや なんとも調子がいい 嘘じゃない ほれ細胞のひとつひとつまでがね こんなにね 20兆個の細胞が一斉に私を鳴らしているんだ ほら 私には その細胞の一つ一つが20億年程の歴史があるんだよ

(──金華山沖波高し)

(──まあーっ おなら)
(──ならのみやこのならなやましきなりひびき)
「おーっ うーっ」(発声練習)
──おいっ 私の田んぼはどこだ 私も一握のライスを私の手で大自然から奪ってみるか 私の口まで それにしても薄い 何がO2がだ(せきこむ)余には気晴らしが必要だな それは余がやってみせてやる mt.FUJIのてっぺんで石蹴りでもするのはどうか 山頂の石けりとシャレてみたい いや気が変わった それより ふむ

(──北の風 風力3)


おおFUJI 我が妻 あづま


(テーブルにとびのる)


私が地球儀となってあげよう


(天気予報けわしい)


お互い孤独だからなあ


(火災警報入るサイレンがけたたましい)
(石蹴りしながら)


余の母は余の妻で 余の妻ならば息子の母だ 息子の母は余の娘 余の娘が息子の妻だと息子の妻は余の妻で 余の妻ならば息子の母だ これで世継ぎはととのった ほれみろほいほいほいっ
──葵の合図でリンチ撲殺(あっという間)


(大合唱隊による“君が代”斉唱)


──葬式兼即位式──

(能の様な それでいてモダンなユニークな儀式を考えること)


あたらしきとしのはじめのはつはるのきょうふるゆきのいやしけしとど レジメ!レジメ!


(大合唱隊によるオリジナルの“君が代”斉唱)
(このときハンモックの上で赤子(全裸のダンサー)がゆれている必要あり)

音楽
Gグループのバッハ平均律立のラストナンバー ロ短調
ダンス2 祐仁の全く動きを抑制した“静止への激しい接近”を踊る
b、AOIの突発的な「陰部の風さらし」
(白鳩がステージで遊ぶ)

一億のシオンの娘らよ聞け わがすめらぎの人であせば美しきにかくてなが神となりしに


(突然 祐仁によって白鳩の首が切れ鮮血がとび散る)
(この間にステージ上の物が公安警察によって仕つらえかえる)

ステージは大きな棺桶か 工事現場といったふう ろうそく、もしくは裸電球一ケが風にゆれている 父の亡霊と ひどい浮浪者の様な息子との深夜の出会いであるささやき
(祖霊と祖霊が事物のそれのようにきしみあう様な)


──汝の隣人を殺せ 人類を憎め 憎み尽くせ 日本の娘等の乳房をその靴のびょうで踏みしだけ 日本の男どもみな番号をつけて処刑場におくりこめ この星の上にあるいは下に あるいは内に あるいは外にあるすべてに処刑場に すべての原爆で海という海を引き裂け空と海とをファックさせ一つのものにしろ すべてはこの星の上で滅ぶのだ そうして出来上がった新しい地上に新しい赤子等の種を蒔け
──余は働くのです
──おまえにはそのドアがない そのすべての口はわしの死がそれを封印している
──それでも余は働く 人間になにができるというのです
──既に言ったではないか人間になどなる必要はない!殺人者どものための神となるのだ!わしが先程ささやいたささやきを そうとも神となってエロスを働くがいい というのも、わしはおまえがわしの予言を満たすときまで死ねぬのだぞ
──それは余の働く働きではない
──おまえが おまえの新しいドアをつくり出さぬかぎり、おまえにはどんな働き口もない これからわしがいう四つのけわしい非常口のみが開くだろう
──それはまだわしがこうしておまえに囁き わしの魂を漂よわせている出入口でもある その霊にのっておまえを導き入れたい わしがこうしてとどまっていることが出来るというだけで人間の謎でもあるのだ ここに来い
「おまえはこの地に巣くう殺意をまず一点に集めねばならぬ 人類はふくれ上って 静かに殺し合い いま充満している 殺人者を支配するのは神のドアをあけ放ち そこに入ったものの仕事だ そこに神などはいない が入ったら最後 一挙動一挙手 言葉の一つが神でなければならぬ 心の奥底で荒ぶる神々の奥悩を支配する司祭となるのだ」
わしが殺されたのはそれを拒んだ故 というのはおまえのためにそうした もしおまえがまたそれと同じく拒んだなら いましがたの人類のあやしさからみて やがて一億の赤子がみな一つの殺意のかまどに入れられ 彼等みな親兄弟血ゆえに憎み合い殺し合いみないなくなるであろう そして一億の赤子の全滅し この島にはおまえだけが一人ぽつねんと猿のように残る「一億マイナス1」と「1」のいづれが重いか考えるがいい みなわしと同じ死者となり この列島が国であることすらやめるがいいか そして得るのは猿が一匹 おまえが一億マイナス1の身がわりに 時が到ればその非常口から入ってくるか そしてその時を過越せば わしは一億のマイナス1+1の中によみがえる わしは 親兄弟が互いに殺し合いしないよう再び最初の情報となってしまっていように いかなる水も血よりは濃いこの世界で
──解りました 余の為にまっていてくれるよう
あなたの死をいやすにたるふさわしい新しい“死”をこの列島に そしてあなたの死を“核”にして全世界を一つの“死”のコマにすべく ふさわしい“死”を創造します


(祐仁泣いている)


《失綜》(一) 前ぶれライト明るい


ステージに過激な内容の演説が数組 その前にテーブル
祐仁、父そっくりの狂いの真似をしながら入ってくる大臣達は会議中(偽の大正天皇達)
祐仁やにはに 大臣達を隠しもった日本刀で皆殺し

母──息子よ お願いだから止めておくれ!でも権力はこれで私達のもの(独白)

(祐仁、母をののしって消える)


息子──ブタが悪霊とつがった気遣いめ!とか(オペラのように)

祐仁消える


(AI) 昼である


(青年Aマサヒコが 両親の棲家から失綜する寸前 とある極左コミューンの原野でのアジト建設現場)
(出場 全員)
一人の男の演説をBGMであるかのように若い男女が12名ぐらい規則正しくメカニックに働いている
彼等は動きながら 数式を暗記したり 世界史年表を暗記したり 仏語の動詞活用を暗唱している


裕仁あらわれる(みんな眼には見えない)

働いている若者達の首筋にそっと息を吹きかけて回る


しだいに息をかけられた同志が愛を意識しだす。労働が停止する 見まわりが来ると また働き出すが どうも前のようにメカニックではない


しだいに見まわりが来ても 裸になって美容体操をしたり 歌をうたったり セックスしていたりする(ホモも含む)
すでに妊娠さえしてる女もいる


夜である


会議がある 会議の中央にいるのは祐仁である
祐仁笑っている
昼間の若い男女は一列に整列させられ(すでに子供を連れている者もいる)
ロープでくくられている


女性のボスの演説あり 女性のボスの命令で処刑が開始される 処刑のたびごとに ホモフィクタス宣言が大声で読まれる
彼等は殺されない様“サンライズサンセット”を歌い続けている


突然地震が来る


祐仁いなくなる


朝である 村の女達が集って泣いている


集団リンチのあと 女性のボスとその男がシャベル
で土をかぶせているところへ 再び祐仁あらわれる

祐仁 何があったか(ささやき声)

村の女 もう腐って臭いがしています

祐仁 そうか(と云うや落ちている石ころをひろって女のボスを殺す)男は切腹


☆Alと平行して 客席でAI“スターファイヤー”のシーンが行われるホールが“スターファイヤー”の客席という設定(別紙原稿)
CAST 父(ルビ:マスター)=三原四郎 その娘=葵(妊娠四ヶ月) ボーイ=梨本


スターファイヤーに祐仁あらわれる


するとマスターは 自分で自分の首をしめ 苦しそうにころげ回る マスター息絶える
娘は祐仁の靴に接吻し ボーイがその死体に添寝する

※祐仁消える

ふたたび宮殿である 父の「棺」ぽつんとある
──葵、夏 楽子 リナ リサ 相良


葵 みんなの制止も聞かず「棺」をあけ死体の球眼に手をふれる“地震”


──おおっ なんてこと これはひたすら痛ましいあたしだっ ああっまるでもぬけのからになっているあたし 此の世の真空で渦巻く空の空なるを始終駆け巡った
──さわってはだめですわ もし瞼が開きでもしたら一体どうなさいます せっかく腐って臭いをまき散らしながらもそこでぐっすり眠っている172㎝のもの
──生きてたっていいっていうもんじゃあなし チリッチリッタワミッ あたしタワンでくる ──しずかに しずかに(接吻)
──ええっよろしゅうございます そのくらいです やっとこうしてお眠りになったのですもの まだときどきは危っかしい臭いはしますけどTVのテストパターンはつけっぱなしにしときますからね
──不正なひとが不正な言葉で不正を私達に不正な法則の中に放りなすったに 人殺しだよ人非人だよ 一体何が悲しいことさ
──良かったね さあ肩たたき合おう よかったね もう休めるね よかったね ドライフラワーを縛るって言いながら 発電所の所長がホテルのロビーで靴ひもを集めていたっけ 祐仁の罪なんてどうでもいいんだ 良かったね 地上に運ばれるなんてどうでもいいんだよ よかったね 息子よりずっと長生きしてよかったね 顔を撫で合おうね 始めから終わりまでまた私の住みいい地球が始まったんだよ もう台所へ行って途方に暮れたりしちゃいけないよ カーマの樹はすぐに芽を吹くし 産むことも殺すことも知っているさ 娘達が靴下しか着けずに重なり合ったり 這いつくばったりしてすっかり心の空っぽになっちまった大工達を仕事に誘い始めている死体ん中の悪友達を慰め図面をひく科学者達も頭蓋を痛めはじめている あれっ ありゃ解剖学者達だ ずいぶんいっぺえきたぞな ふんっ ムダなこったワインのビンが粉々に割れてみんなふきこぼれちまったさ
──ガラスよ ガラス あたしは乱心罪で眼がヒンむけて何にも見えなくなっちまった 細菌学者のホロスコープにもカビがいっぱいだって言うに あんなものよステッキでつっついてみればいいよ 臭いでも嗅いでりゃよお 気絶しなきゃだね
──私等 最初からあの人の肉には手を触れなかった 保存法も知らないし調味料も発見できない おまけにあの人の肉はあたし達の調理法では食える部分はほんの少し おまけにまずい だからみんな処置に困ってうろたえている
──私の主人にたかっているシラミども!このなまけもの!この三日メカケ!このはつかネズミ!このていたらく!すべての速度にその筋があるわっ すべての枝にチャンスがあるのよっ 石を投げるチャンスがあって石を集めるにはその速度がきっちり見合っている 種が殖えるにビートがある その見合うサイクルで種を抜ける速度がある 殺すにもその節あり 抱くを止めるにそのビードがある 発見にその節めざめて 失うに眠れる 発見を保つにその速度があり知恵を捨てるにその速度がある 調和を裂くのにビートがあり 縫うにそのビートがある黙るにスピードとそのチャンスがあり 語るにチャンスと死のスピードがあるというに 総ての人間はこのスピードにまさるところが無い!息絶え悶絶するのだ!


ソングズ(──夏)


テーブルの上に飾られた花々と路上の石塊とが交す秘事!カーテンの裏で一切は論証され尽くしてしまったという 血縁が血縁を許されなくなって以来 家父長の部屋で家具と家具とが放縦に交す指話がそれ!その梁線がもてあそぶのは私の赤ちゃん 私は血のつまった袋だ!寝椅子の上に靴が捨てられ すぐもうドアチェーンがギンギンと唸りをあげる ガスバーナーで歯を焼いているあたしとその色事です。

祐仁、棺を放りなげ女達に襲いかかる
カタストロフイ


《失綜》(二)


TV塔と墓場 チカチカしたり雑音を放ったりしているTV 冷蔵庫 洗濯機 数台

(1)ヒロヒト 墓石(破壊された電化製品の数々)の間に茂る草をひきちぎり 恋人を失った処女のように鳴咽 とみるや その墓場で物乞いをしている12人の女性(オナニーにふけっている)を見るとたちまち自ら一つの〈スーパー・ハードコア・スピードマシーン〉となって一人につき四回づつ犯す


(2)道化とその道行 道化のための道化


このときすでに 何ものをも祝福せんとはせざりき 生まれてはじめてのことなり 後 ただひたすら自己の心中に噴きあげ 物狂おしいその祖霊なる神々のうめきと おのれのエロスの涙をまじり合わせて団体の爆発を図るかのよう


ヒロヒトーゆれるっ!
(──ゆれているのはTVの画面だ)
心が 右に左に 心の心棒がわしの心から抜けおって ほれっそこいらをふらふらしとる まったくの大仰さだ ほれこうだ 心棒め ほんまにおまえはすばしっこい ほれっ こうだ ほれ
(前衛的なダンス)
(心臓を押さえて苦しみ出す)
爆発しはじめおった このわしの心臓の中で祖霊という祖霊が破裂しておる
(──太陽だって破裂してんだ 水爆みたいによ)
(──はやくおれは神じゃないって言いな そうすりゃ楽になるよ)
TVがゆれる
(──墓じゃねえか)
ベッドがゆれる
(──腐った棺桶じゃねえか)
なにもかもゆれている
(──あんたと一緒にゆれてやっているからさ)
うるさい奴め!おまえさんもさっさとどこかへ行って就職でもするがいい でないと遅かれ早かれ余と同じく狂い死か飢え死に へたすりゃその両方一遍にすることになるぞ わしの代わりに
(──恐しい そんでもって一億の代わりに死ななきゃなんねえんだからな)
このまま神のまま あの世もこの世もひっくるめ もっとも神らしい神となって ついには神をも超えてくたばるか
(──この時代遅れ)
それとも いっそ可愛らしく無害な一億を代表して猿となってよみがえるか
(──もともと猿じゃねえか)
余が自殺すれば この惑星は神となって八紘一宇のくらやみに滅び去るのだ
(──うじうじかっこつけてんじゃないのよジーザス・クライスト ちくしよう)
イエスならこんな時どうしたと思う
(──やっこさんはすこぶる簡単『わたしは喉がかわいた すべては終った』これで終わりそのあと父さん!とか一言いったらしいよ)
はっきり言え!
(──なぜ、我れを見捨てたもうか)
だが 余の父は白痴だった おまけにめかけの子だった でも余には父だった みんなで余の気持ちも知らず父を捨ててしまったのだ ティッシュペーパーを捨てるみたくみんなの見えないところへな ちっとも生理の血がついてなかったな
要するに人間じゃなくて猿まる出しで恥ずかしかったのだ
その反動でわしは神にされたのだ
(──いいおとなが泣き言いってら)

おまえらは根っからすけべえなんだ すけべえは殺人などできやせん 単にすけべえなだけだ 第二次大戦などたかがしれている
あれぽっちの殺人で余を自殺させられるとでも思っておるのか 人間はこの星に生まれて以来 人間など一人も殺しておらん 一切合切ひっくるめて殺人者という輩はみな無罪であることをここに告げよう

すべての人間は未だ自殺しかしておらんのだからな 許せない 許してくれなどと無言のうちに言っている以上 こいつが世界歴史のもつ唯一の生存の掟だね 他自に他殺といわれる自殺ももちろんあるにはある ただ自殺にも巾があってのことだ

それにしたって他者の狂気が死の原因になってるにすぎん ははっ人間はアホだから 不可抗力などという淫らな自殺があるのは ひどくてめえかってに誤解しているにすぎんわい“世界経済原理”という問題は恐ろしい問題だ完壁に100%他殺原理にもとづいている あの世もこの世もひっくるめて 眼とという眼はすべてこれから生まれる連中の眼もひっくるめて 人類などという泣き虫からこぞって“他殺”の徴本人と余はいわれねばならぬ

わしらが殺したのだと異口同音に告白し歌いうる自殺が万が一あるとしたら そいつこそ経済原理という問題だ そいつは神などという安っぽい暗示(傍点:暗示)や幻想や真理のかたまりなんぞでなく まぎれもない人間のことにちがいないのだ わしがいまからあの世に行って残してゆく死体など 獰猛な猿どもの手にかかり スーパ一マーケットで缶詰にされ 売買されるのがおちだろう


幼女売春と主婦売春が流行りに流行り 死人売春がこの世を腐倦し 政治家などはみなそいつら死人のヒモにすぎない 余の恋人の陰部を喰い尽すうじ虫どもめが ほらっそこにハエがぶんぶん飛んでおる

わしが今さら人間にもどったところで ろくな人間になれるはずはない いっそ猿らしく猿回しの子供にでもなってやるわい 一億匹のウジ虫どものためにな


余の世界歴史が余に告げくる
汝 我れに告げ国家ほど遅かれ早かれ 我が婦女子のための単なるスーパーマーケットにすぎん事が その両眼に知らされるであろう 余は逆う 余の一億がイエスを越え その祖とイヴを離れ アダムをも越えるまで
余の男根!余の唯一の意中の処女(ルビ:ひと)アニムス 余の資本=全人類こそ余の讃えるメシアンのために滅びるがいいのだ


(女性達殺される)


──汝よ何一つ運ぼうとしない石女だ
父を求めておびただしい娘等が 夜のはきだめをウジのようにさまよう 天体の向うに己れを殺す 父はいたのか男はいたのか!おまえ達のはきだめを水爆が笑って猿芝居
すべてはおしまいだ
おれ大脳に祝福あれ
大脳 この父が余を刺した
良き釘
余が走ったすべてのアスファルトよくたばれ
余が水爆となる
余を見つめたすべての街路樹は 余のはきだめを吸い上げ 余の青空へ上がれよ いまは黒ずくめのかたまりにすぎん 余をいたわれよ
清められた大いなる天体 樹よ
樹の 樹々なる父のたましいの遊び場


(音楽)


我が父は短くも美しく燃えし


(バッハ クラビアコンチエルト P グレングールド)


女達 フルヌード 12本の樹である

──なぜ女達は裸でいるのか
──あれは女ではございません アスファルトの樹々でございます


ヒロヒト この女達の手によって 白の正装にかえられ ジーグとフーガのダンス

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☆ホール

公安警察員達 劇場点検
ステージ アスファルト血のりのついた樹 工事場には不釣合いな豪華なテーブルが運ばれる


ひとしきりナンセンスな会話


と 突然地震があり白痴の出現
一番若い祖母 つづいて女中 そして一組の上流の中ほどの家族が夕食をとろうとしている


☆テーブル遊戯


《二つの非常口》
テオレマよりA. B. C. D


☆テーブルXn(30分以内)

《テオレマのエピソード》


M、サティスファクション 葵の踊りと歌


青年Aの大層平和な家族が路上で食事をしているところへ息子が旅先から帰ってくる 青年Aは一人の美しい青年マサヒコを連れ立っている ここいらは浮浪者や手製アクセサリー売り(処刑され一度死んだ革命家達)がたむろしている


A ママーッただいま

母 まぁーっ おまえ! ほんとにこんなことが!
あなた帰ってきましたよあれが!ほらっ帰ってきたんですよ

父 息子よ みなさい 今日はここにこうして食事を出して わしはおまえの帰りを待っていた
わしらは通りの真ん中に行き倒れた一族の子孫だから地球に遊ぶわしらの祖先をしのびながら堂々こうして通りの真ん中でな 晩餐をやらかそうと思っておったんだ

A パパ喜んでください ぼくはこのひとと知り合いになれましたよ ほらっ!このひとヒロヒト君というひとなんです もう ぼくらすでにこんなに愛し合ってるんです

マサヒコ ぼく本当はマサヒコなんです

父 ふんっ そうか 胸が痛い それに腹が減っている 頭もふらふらする 手先がむくんどる わしの息子よ おまえも愛というものを知ったのか

母 ……どうぞ ごいっしょに お友達のかたも

妹 (ため息まじり)きれいねえ あの人

女中 あんなあめふらし……オスでもメスでもない

ということは マサヒコはしだいに家族全員からそれぞれのしぐさで次々に犯され ここから区別 分別の境界線が消えはじめる


女中は食事の用意 その他てんてこまいの忙しさである
ここでマルタ マリア イエスのエピソード
(女中) (Aの妹)マサヒコとで行われる


母がリートをうたい その声につつまれて息子とマサヒコは愛し合い 息子ははぐれて踊り 母がマサヒコを息子に変わって愛しはじめる

☆歌 酒 ごちそう ジューク シンセサイザー ついに一家全員 マサヒコの奪い合いになる ついに互いに互いを惨殺するクライマックス

1.息子 マサヒコの膝の上で痙攣し心臓マヒで死ぬ

2.妹は母を殺し 自殺

3.父は気が狂い 妹を撲殺するが うしろから女中に殺される


父によるマクベスのせりふ
幼児が泣きながら最後に息絶える
突然オージイパーティに仲間はずれだった女中がひとり狂ったように歌っている

マサヒコしずかに去る 女中舞いながらついて行く マサヒコ手をさしのべる風な気配


それまでどこ吹く風の浮浪者や 手づくりアクセサリー売りも一斉にそのあとを一列になって皆ついて行く ステージはまぶしい 大きな樹が四本


──なんと世界中の心が かくまで揺れに揺れる悪しき日のうち続くことか!はりねずみのような余の地球は余の心のあちこちを たまつき運動とその悲惨を知ってか知らずか猛スピードでとび回りおる


(ステージから客の一人一人を指さし 口々に)

──我が心のうちに滅び去ったサル その名はヒロヒト!世界の観客達 世界へのナルシズム 全宇宙にかく進化したサル生活は生活以外のなにものでもない それがおまえそのものという思想(傍点:思想)だ だが ひとたびそれが万人の涙をさそう餌食となるや たちまちヒトの心となってそびえる おれ達の思想は思想ではない それはおまえの餌食 生活そのもののうちに棲む死者なのだ
死よ死者達よ!ヒロヒトよ!
ヒロヒトのどんなサル思想にも それと負荷された肉にふさわしい世界思想の死者達が棲んでいればこそ それ重力となって諸事物みな我が宮殿をなせり ここにて いのちは肉をはなれ 言葉となり そのひとつは愛となる 〈天皇〉もまた一つのサルの建築物にすぎん だから心の負荷圏の思想には 進化した人間達すなわち世界の餌食達が生活している 思想を生活すれば万人が万人 一人残らずたちどころに殺されるだろう

──なぜ?

──うるさい!それが下品な原因だ やつらのな それが余の愛の愛たるゆえんだ!
おおっ おそろしいっヒロヒト!のめかけばらめが ふんっ 女々しい奴等も どんなに女々しい女も おれほどまでには女々しくはならぬ すべて余の世界終末する愛さえその息として運動する余の恋愛システム社会はいかに運動しようとも 余の母なる闇から出ることなく その死は女の胎から1ミリもはみ出るものではない!余はこれが真理であることを一億に分からせてやる ここにP・オーシャンも蒸発し 一億もみな宇宙のチリになっていくのだ すべての社会運動は諸事物の空虚を心にしまいこめてしまうのだ 一体どこを誰の感情でいかなるパルタイを欲して運動しているのか?みな人間という心の中で すなわち そいつは わしの頭脳 その中でだ 余は律令制を余のたましいの棲家にして久しい 無名のいきものをシステムする〈一つの感情〉をわしは世界に表徴してきた よってわしは自動詞世界の孤独でもある 余の他動詞はこの孤独に自らのオブジェをもつ


──すべての歴史はいま世から去った 余はいま一つの劇を産む鏡だ
わしはパルタイに生まれ そのパルタイに死ぬ すべての革命はこのパルタイの変転のうちから出るものではない
女の胎から産まれたものは みなその胎より大きくふくらむことはないように いかなる革命もわがパルタイより生れ 死ぬ そして それより大きくなることは一度たりともない
それにしても余のパルタイの中のパルタイ!人間は余のハートのみで生きる 石とって死すとも今後は生きる それこそ余の人類をとじこめた諸天体までが永久に 余のエロスで倦怠するパルタイだ
全世界の変容はここより始まり ここに終わる 余の美醜のすべてが万人の手で遊ばれる思想であり パルタイである


☆オスの《道化》


おれの愛はごらんのとおり 人間どもの生きながらえるまぶしい妄想の中でうごめくごみためをつくる以外に一体なにをしえているのか!
まあこれもいいだろう この地球にしたって最初はちっぽけないのちのごみためにすぎなかったんだからな 人類はおれがごみためあさり中の偶発事故としてうまれた
いつからか実体がおれから人類になりやがった 実体のやつめおれからあっちへうつっていきやがったのだ
ごみが水を噴き ガスを噴き 社会主義だの資本主義だの何でもござれ 芥正彦の宮殿なんて一体どこにあるのだ あの気ちがい奴が ほらふきめが 男も女もみんなこのおれのはきだめの腐敗物だ 奪いとっていくがいい おれのごみため抜きに人類などただの一秒も生きられんのだ 宗教 文学 祭と政治 精神病 人間が欲しがるものは何でもかんでもここにゃああるわい ははっ
「余の宮殿ではどんな小さいごみでもこの都市よりは大きい──」お笑い草も気違いもいいかげん みな自殺のし放題 腐った麦もはえ放題 権力ぼうぼう草ぼうぼう おれのごみだめだけはいつも大繁盛!
すべての自由資本主義政治はヒモ業に通じ すべてのマスコミはそのネットワークだ 人間の無意識は経済学の地獄にぶちこめ
ヒロヒトはおいらのはきだめでイモ虫のようにもがく ごみため ごみための大繁盛!いまわが有機物の歴史は欲望の世界を二重支配している おかまと人類のプレゼント レズビアンは一つむじなとなっている


“一方、自殺者であふれる 様々な死に方がならぶメインストリート”

《芥正彦の真似をしている芥正彦》世界思想を己が実父としているいけにえものが その下方 青々とした上空にシーツのような洗濯物らしきがさながら万国旗のようになびいている。ステージは大きな「炉の中」らしい


☆青年ヒロヒトのダンス、重力とその恩寵、マナ不滅の法則


女性アナ 「ですからあの方は、わたしテレビジョンにとっては、まだひどく下等ないわば商業的いけにえにすぎません」

TV、この20C小石の奇蹟たるや いまや40億人類をコントロールするということでいえば大教会にまで発達し、各家族、そのアダムイヴに与えし「聖体」の幻影まさしくVISIONによって常に、このステージにも顔を出しているといえよう。


☆自殺者のセリフ例


おい企業めよ!またわしの悪くもない腹わたをえぐりとっていきやがったな。おまえの岩石が人間の秘密をほんのちょっぴり知っているからといってな、わしのようなどこの馬の骨ともしれぬ人間のやわらかな内蔵やその歴史から幸せを産む宗教を欲しいだけひっぱり出せるってものだはないんだ
わしら人類は無限に特異な空間なんだ。どんな軍隊よりどんな国家よりどんな企業よりもな、おまえらのようなすれっかしの空間じゃないんだ、この人間のいる宇宙たるはな、それでもびくともしねえもんだぞ!おまえらがわしの血や肉を全部盗んでいってもな、それでわしが消えてもわしは息しとる、おまえらが削りとっていったわしという凹みにこそ人間の歴史が休み、大宇宙はそのいのちをおそれ、はじまりとおわりとを同時に宿しているんだ。
わしの眼には、わしの国家は企業ゆえに獣どもの巣窟になっている。小役人達の異常性欲が渦巻いてそれは政治、大衆という幽霊どものようにも見えるが今度わしを盗むとときはもっと丁寧にやれ!
この貧粗な虫ケラ以下め、おれの石棺とその天使達に触れるな、悪霊芸術家どもめ!そそのかしやおまえらもだぞ(ABC……)


(あっそう あっそうなの 大合唱)


これらすべてがわしの愛の生活か わしのパルタイの上品でその淫らで美しい数字的な心と心の交際がつくる24時間について 奴等はいつになったら気付くのだ かくまで自己を自殺者にして不完全な思想を売り尽くして社会を片輪者でうめている世界企業はもっとわしのパルタイを急げ もっともっと死を鮮えらせてユニークな汝の死の創造力をしてだ!
もたもたすると人間はまたいのちの消費に30年前のように間違いをしでかすぞ


あっそう あっそうなの


──あなたはあのとき母である私を、それとも父の前で立ったまま手ごめに私を妻にした、あのとき、おまえ、いやあなたはおっしゃったわ。“わしは神だおまえ達人間どもの生活はまったくもって死だ、それ以下だ”と。そしてすぐにわたしはあなたに申し上げました“それは真理です、それを口にしたゆえにあなたはもし生きながらえるならば、生き恥を晒らして苦しみ続け、悶え死を呼び寄せるでしょう”と


──ああおまえがそう言った、覚えておる、妻でありながらよくもぬけぬけ言ってくれたものだわい


──イエスはあなたよりもっとおじょうずでしたわ、あの方は決して、ご自分を決して神だとは言っていません


──嘘付け!あんな人殺しめ、そのくせとんでもない女衒めが 神の中の神とでも言いおったか!母上、あなた 自分ほどの人殺しはいない、こう思っていらっしゃいますね、いいえ
やつからみれば女の胎の妄想でこの世ができているのだ
──いいえ ただ一つの神の大いなる空虚のただひとりの子だとおっしゃったのです、御自分をわざわざ子であると限定なさってお言いなのです


──同じ事だ


──いいえなんと恐しい違いがここに秘んでいること、そしてあたし達の間になんと偉大な傷口が開いておりますことでしょう


──売女め!この自己保存則のかたまりめ!無限定のどこが悪い、だからわしは30年前大戦争をしてやったぞ、奴はどうした?12人の嘘付きどもは ふん、わしの祖霊どもの血を染色体を沸かして、みな長年の束縛から解き放ち、海という海を同時に清めた。鉄を浮かべ、鉄を飛ばした。わだつみというわだつみが余を讃え、余のたましいとなって地球が送ってよこした2600年の恥辱をはらい清めたのだ、わしがいなんだらどうなった、みな仲間同士で殺し合い 死に絶えておるようじゃろうに
──いいえあなたの祖霊どもはみなレーダーで監視され、動きしだい撲殺されました。そして核融合反応の光速でふくらむただひとつの無神論をあなたに知らせました。あなた、お気付きのことと思っておりましたわ


──ちがうあれはわしの神風が吹きおったのだ。一億が望んだのはヒロシマの神風じゃ、おお偉大な言葉じゃ わしがそれを沐浴するやいなや、するとどうした奴等め突然わしらを殺すのをやめおった、わしの首に手をかけて、それ処刑だという段になって突然おそれはじめおった、見ろ、今わしらの風が五分五分の戦いをしているんだ。この狭い庭から吹き上がった神風はJ. N. P. という新しい呼び方はされているが、みな、わしの祖霊どもが生きかってきている、余の悲痛な神々しさを讃え 世界中を吹き抜けておろうに


──全く月の上の石よりもものわかりのわるいひと!


おい、病めるヤオパンチンパンジー供!おまえ達に問うが、余以外にだ、一体何人の人間が椅子の悪徳をその器に成就したというのだ!一体何人の人間が己が家で生まれては入りくるすべての犯罪者を許したというのだ。余一人をも許せぬおまえ達のしたことが!この俺に何を悲しめというのだ、聞いてあきれる!こと此処に及べばすでにいくら余に策をもたたしても無駄だ、自由なくして、殺人はありえんと、いくばくかの自由を求めて自殺などしおって!葬いなどぜいたくだ 余は飽き飽きしている、いのちの爆発も余の沈黙にはささやきにひとしい諸君等の裏切りとその死のあの世での泣き声がまた噴き上げる 余の口に溢れる蜜と乳、余の怒りが諸君をして諸君等を祈らしめたとて世界は余の血と糞をこね合わせるだけであろうに、余の心地良い心変わりよ、諸君等の家々には忌々しき不条理に憂ふ!慈悲乞いの悪劣漢めがなだれ込む、さあっ この世の悪臭を放つ、むごたらしい酒盛りをおまえ達の議事堂一杯に用意しろというのだなっ 余がこの世に妊んだやるせない乳飲み子を余の妻にとってするおまえ達のやりくちをあばいてやるためだ
“私達を悔どらないでください不幸な方!”
なぜこんなふうになるのかといやあ、ちょいと耳かせそこの裏切りものめ、どうもなっ俺の気むづかしさや苛立ちはおまえ等の裏切りのためじゃなさそうだ。こいつはなぜか俺を嬉しがらせるが俺のやさしさだけは天界知らずだからな。人様からいただく心遣いや優しさだけでは焼石にソーダ水だな、あっというまに、みな吹き消えてしまうのだ、俺の器感めどこかに欠陥があるかもしれぬ、すべて霊気が燃え出してしまったのだ。だからいっそう俺を冷たく扱うがいいっ、ああ俺に慈悲を乞うているスケ供のみんなみんな消え失せろ!氷のような子宮をもった奴だけ俺を抱きにくるがいい《さあ、お休みの時間です誰も構ったりしてはなりませぬ》
(女達を引き連れ去っていくAOI)


再び宮殿内 AOI・一人突然一人の無名青年が侵入、AOI刺され死ぬ、無名青年血だらけ、オナニーする、去る


青年ヒロヒト

「鏡」、殺されているAOIの遺体、小テーブル、椅子が二つ(ACT&&AOIの)

ヒロヒト
(鏡にむかって)──そうかい、それでかい、あれほどまで奴を愛していた奴の妻まで幼い子供等の手をひいて、おれのせいで路頭に迷い、奴を慕ってた囚人どももおれのせいでみな無期懲役に処せられたというのか。おまえだおまえだ、おまえの意地悪な現実殺意=沈黙のせいで、すっかり奴は気違いにされたんだ、毒もったウジ虫がおれの体中をかけめぐり、その揚句生けるしかばね同然になり、血も肉も宇宙をへめぐっている、おいっ、見てみろ、これでもうそだと言えるのか、おいっ、おまえおまえというおまえ、それでもおまえを支持する大衆のせいで、父は何ひとつ悪いことをせぬまま(父の存在自体が犯罪だと)その生身はすっかり極悪人扱いされたのだからな、するとおれは奴にこの世界をかけ体制上部構造の形而上学的伝統にのっとって、裏表別々になったおれ自身が、いのちに裏表一体の復讐してみせねばならん


鏡 誰にだ?そしてなんのために?

ヒロヒト 世界人類に!その良心のもつエロスにかけて

鏡 そう己が魂の友身だけを知覚しとるとが生身がすっかり化物になっていくがいいのか、この放射能を浴びて火だるまになった阿呆めが
(独白)全てのイエスは物質に移行しえた、ちらちらちらつきながら

ヒロヒト うるさい単純コピーめ、おまえは道端の石ころから原爆でもっくり出していればいいのだ、このおれの一大精神分裂の変転のうちでいいからおとなしくしてやがれ ともかくこのおれの、いやっ あ奴のいのちはいうまでもなくこっちだ、あっちはこっちでこっちはあっちだ

鏡 いいからその単振動系類にあきがきたのさ、その臭いも衣服にしみこんだ記憶も歴史の一済合済消滅させてたにゃならんな

ヒロヒト おれがおめえを殺してやるさ

鏡 おっととそいつは失敗すれば、それにいまのおまえでは100% 失敗するだろう。日本民族のすべてをこの世から消滅するはめになるわい、用心してかからにゃならんぞ、権力はな、どんな国家もいまだヒトの心とその秘密に勝てたためしはただの一度たりともあったものだはない、それくらいは教えておいた、知っているか、ふふっ


ヒロヒト (鏡に向かつて)──そのからくりがヒロヒト、おまえの国家権力というものだったのではなかったかい、ヒロヒトおまえの息子は20の世紀が終えた21世紀に、わしのいのちとひきかえにわしが手に入れた日本民主を義教のすぐれた宗教革命者となるだろう、わしはわしのいのちを与えたものに心ひそかに復讐せにゃならん、奴だ奴を抹殺するのだ、あの世からもこの世からも人の心とその秘密をにぎる精神からも!


ACTと鏡の中のACTとの激しい会話

AOIの遺体を抱きながら演説ともセリフともつかぬ会話


客席が一人の人間であるかのよう


劇場はすでに極めて現実そのもの単なる建造物でしかない、


音楽・サンライズサンセット
ACT自殺 とうとうに

☆ステージ
中央に一本の大樹OPENINGで献納された血の枝の根付いて成長したことのシンボルマークつつましい結婚式のテーブル
死の世界からの復活AOIの登場ささやかなウェディングドレス


《祐仁》登場


ハネムーン・カップルのハネムーンダンスおどる。しずかに。


全出場者が着席 テーブルにたくさんの花束がとどく、高らかに君が代、そしてファンファーレ入場の時と同じ曲。


『The Young Emperor's BloodBird Songs 20c悲劇天皇祐仁』の構想メモ
『The Young Emperor's BloodBird Songs 20c悲劇天皇祐仁』の構想メモ


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