作品

浄められた夜

ホモフィクタスシアターパフォーマンス NO.5


星からの悪い知らせ Part2

プロローグ付180分12シーン

芥 正彦

DATE 84 July 24,25

PLACE 草月会館ホール
劇団東京都新宿区若草1ー22ー15 リキューハイム105
TEL3351-9429

制作
美術
TV
ダンス
音楽
道具方
衣裳
メイク
証明
舞監
演出

プログラム

入場のパフォーマンス

シーン 1 花嫁のアリア
シーン 2 大地母神誕生の儀式
シーン 3 身篭り
シーン 4 和歌と心中のダンス
シーン 5 小さな家庭劇
シーン 6 パンとテーブル
シーン 7 父と子の面会
シーン 8 閣議
シーン 9 浄められた夜■、■
シーン 10 復讐の夜
シーン 11 瀕死の白鳥
シーン 12 復活カーテンコール付

退場のパフォーマンス

作品登場人物

花嫁
乳母
息子 ヒロヒト
ビッグマザー 大地母神 皇后
四人の白猿 四人の男神 四人の父 四つの大正
赤 青 緑 黄 サル
サングラスのテロリスト
警官隊
仮面の紳士4
まほろばの女の子
四人の処女 女中
ある家庭劇の母
ある家庭劇の父
ある家庭劇の坊や
心中のホモ
レズ
姉弟
百姓 乞食
赤の軍隊 青の軍隊
白の巡礼

(PM5:45)
TV一台、花輪二つ、劇場玄関ロビィ、ガラスの立桶にAct 、
Aoi 裸で収っている。
白い砂をしいてある。客その上を通って入場する。
受付 メインロビィ、枕木のテーブルオブジェ、客席ドア、それぞれの美術パーフォーマンス。

(PM6:10)
ロビィ電気落ちる。客席ドア封印解かれる。
劇場はすごくまぶしい。どんちょう上げのささやかなパフォーマンス。

(PM6:15)
ベェートーベン、運命の演奏ではじまる。
(三二番)
(アパシュナータ)

〈第一場〉M(ピアノ生演奏をバックに古典劇のように)

花嫁
私は身ごもった、私は世継をつくった、でもだめ、明治大通りから昭和通りへとひどく意地悪な悪い風が吹いてきて、その風が赤ちゃんをさらっていってしまった。思えば三八年前、私は平和憲法の花束とともにこの家に嫁いできた花嫁だった。今でも思い出すのテニスコートの誓い、はじめてのキス、そして晴れやかな祝祭、私のために開かれた東京オリンピックなど。ああっ私守れなかった私の赤ちゃんを、私はもう人間ではなくされている。祖霊達を棲まわせる木々でなく、言霊にゆれるその木々の葉でもない。強いて言えば、彼岸に事物を探る傷ついたとぎれとぎれの脈搏だ。
(きれいな音楽)
無傷な嫁はどこにいる?このくらい家、血のついていないお嫁さんは日本中どこを探してももういない、日本脳炎に冒され、夢遊病者とファックしては堕胎し続け皆気を失っているから、その上、恐ろしい原爆の爆風が吹きあれている有様だ。

今アジアはわれらニホンのG. N. P.の悪い種を身ごもって一番やわらかい脳味噌から滅び死んでいき、アジアなるすぐれた母性すら失った。GNP 追求ノイローゼ患者どもがこの家をのっとり、破壊し、十億匹のゴキブリさながら腹部を食いあらし続けたからだ。
(観客に)息子よ

M
裸のおまえを見るとかよわい腰をなでる雨の不安が分る。
自分のほほ笑みを知らないでいる熱病うかされた海の怒りが分る。
やがて寝室に血が鳴り響く。
でも、おまえは知らない、ガマガエルの心臓で咲いているすみれがどこに穏れているか。
だから、私の腹部は息の根の戦いだ。
おまえの唇は輪郭のない夜明けだ。
生温かい揺りかごの下で死人達が順番を待ちながら呻いていた。

(やがて無造作にステージのエッジに腰かけ、客をみつめる)
乳母がついてきている(鏡を手に)立ったまま

乳母
おまえさんはいつまでそうやって日本人の顔をみつめていれば気が済むっていうの?ごらんなさい、みんな平和ないい人達ばかりでしょう。この国は憲法がそうできている。───
「我らは恒久的平和を願い……」

花嫁
あなたがたは、私を花嫁にしたいと言いつつ、私を隠し、自分が花嫁になったのだわ!

乳母
そう疑ったり、悲しんだりすることはもうないよ、テニスコートにみどり児が捨てられ、発見された時、顔をヴェールでおおった野良猫が、その子供をむしゃむしゃくったりしてるからって、こんな時は何もないような顔をしなくちゃね。かえって悪い事になるよ。

花嫁
おまえはこの国のどこかが平和だと言うの、あの獰猛な顔がおまえには見えないの! もっとも、おまえはこっちを見てるから、お客は見えないんだろうけれど。

乳母
奥さん、そんなにいばるなら私だってあんたを国家機構に訴え出なくちゃなんねえ、そこいら中にかってに息子の身体をバラバラにして、バラまくように埋葬しちゃなんねえ、死んだからって、食ったりしてもいけねえ、勝手にいじっちゃなんねえだ。

花嫁
それはおまえ達、下々の下品な感情がそうさせるのよ、あの子はもとはと言えば、私の肉体だった。息することを奪われた後、私が食べてやらねばもとに戻れない。じゃないと、誰かが、もっといやな、悪霊に戻しちゃうでしょ──だから私、少しも悪いことなんかしてない。私は風に逆ってあの子をこの老いた宇宙の星のひとつにしてあげただけ!いつもこの中庭で月と一緒に踊っていられるように。光り輝く向う岸に行かせてやりたいの、私の血潮にのせてね。星は星に、血は血に、肉は肉に、いのちはいのちに戻るの。だから、あの子はいつかはまた私の肉体からそっとよみがえってくる。あの子はおまえ達みたくその祖先が意地悪く貧乏な類人猿なんかじゃなかったんだもの。第一こんなこと子をもったことのない女になんか分るもんですか。

乳母
じゃあ聞くけどね。ハダカの猿と言ったけど、あなたの家の玄関先で大企業と一緒にいかがわしい肉屋達が共同で創っているあの猿達はどうなるんだい?最高裁判所で大問題になっているって言うじゃないか。今迄内緒にしていたけど、私は報告書を出すようにと、しつっこく法務省から、戸籍に入れるなら、早く入れるようにと、頼まれてるんだよ。一体どうしたらいいんだね。

(──ラジオスピーカー)
明治末、大正、昭和初期の有名な自殺者の名が次々と呼びあげられている。
鏡(「二〇〇一年宇宙の旅」の黒板とみたい)が入る。
反対側、白い猿達、もう一方の側、ピアノ代わりにモニターTV二台とマイク、儀母神、サングラスの男。

花嫁
おまえがふれちゃいけないタブーが、私達の世界にはいっぱいありすぎるのさ、おまえは、こわがらなくていいの、次の国勢調査までには、私ちゃんとね、かたをつけるから──猿のオスメスの比率、近親相姦の比率、何世代続いているか、その大家族の構成、食肉用、ガンヴィールス実験用、観賞用、神様扱い、みんなきちんとするからね。

(ステージに四匹の白いサル、それ以外に赤、育、緑、黄のサル、いっぱいあふれる。いろんなハプニングス中)

メイン大型スピーカから声──アタンシン、シルブプレ

(美母神、声)
私の名はBig Mother、私はすべての肉にそのふさわしいいのちを与えたものです。いまおまえの家の玄関先で飼っている万世一系の猿の家族一億一千万匹をすべて食べ尽くすことにする。おまえ達は自分の身体の中に棲む猿を食うことにしなかった。それ故、私は食べ尽くす。やがて時去り、時めぐり、時至れば、装いもあらたに新しい生物として再び吐き直すつもりではいます。

(赤い巫女が二人出てきて、白いサルに正装を施す)

そうです私は呼吸しています。
おまえ達の息の中で息をし、おまえ達の中で脈打つ。そのはじめにおまえ達の心臓に脈打つことを命じてから、休みなくこの方、この星が滅び去るまで、私は燃やし、かつ凍らせる。殺し、かついやす。

強くし、萎えさせる、大きくし、小さくする。快楽であり、責苦である。安心であり、怯えである。とりつきであり、絶縁である。私はいのちを蒔き尽くし、刈り尽くす。再びそれを新しくする。私は慎まりと、爆発とである。
私は「結ぼれ」と「引き裂き」とである。
───
だからなんだって言うのさ!
(声)
聞きなさい、私はまた、あなた方日本民族が生まれ消え、自らを差し込まれている陰部であり、「見えざる親方」の「ペニス入れ」と呼ばれる。
すなわち、一億一千万汝等赤子等は私の「死のとじこめ」の力にすがってこの島々にいのちを生きる美の共同体をつくりかえたからです。
───
奥さん、この放送は一体どうしたの? あなたの心にはいつから、こんな放送受信チャンネルができちまったのかね。
───
いつだっていいでは、私何もしゃべってなんかいないわ、お願いだからあなたは静かにしてて。
───
私だって今の放送は、たいへん気に入ってますだよ、まるでNHKの神様が、聖書を放送してるみたいだもの。

(声)
そうですとも、御近所の奥さん、私もまたひどく神の国ニホンを気に入ってますよ。私の声に応じて、人々は殺しあい、金もうけに邁進し、核ミサイルを買入れ、それを世界中に飛び交わし合い、古い国々はすたれ、その都度、新しい私の子供達がこの軍に育ちはじめますことを、ヒロシマの原爆に祝福あれ、美しき我が子等のための私からの最初の日本へのプレゼント。

乳母
すごいニッポン放送だわ。

花嫁
ああこんな言葉を毎晩聞かされて、あたし気が狂いそう。

(サル達、様々に外国語やオノマトペを上げ)

(声)
私はまた気に入っています。言葉と民族、その国語に、私のみだらな肉体が息し、また聖なる感情が棲みつているからです。そしてまた私は気に入っています。私の「大きさ」を信じないあなた方が夜という夜を夢魔に犯され、耳では聞こえぬ獣の声を、呻り声をその子宮から上げ続けているのを、夜空があなた方の血潮で紅く染まるのを、私は気に入っています。

花嫁
いじめるのは止めて!私はこの家にせがまれて、嫁いできたのでしょう。お願いだからお母さまもう止めて!

乳母
こうなっちゃ手遅れだわ、いわんこっちゃない!

(声) ff
そう止める訳にはいかないわ、花嫁よ聞け、おまえは私の肉体の秘密と言葉を盗んだ。おまえは自分の息子を私によこすことをこばみ、殺されても気づかづ、その死体を自らで食べ尽くし、自らで葬った。倣慢にもおまえは自分の息子を国家機構にではなく、まだ若く美しい肉体に再び差しだしてしまったので、私は重い罰をおまえに用意する。おまえの家、その国家は、子は母を、母は子を殺し、永久にその血ゆえに混乱し続けねばならぬ、おまえの乳房からほとばしるミルクはいつも息子の血である。
(ふと見ると、胸が真紅に染まっている)
おまえの情欲はその血によって満たされ、絶えず燃えあがりつつもいやされることはない。世界中からおまえの国家は排斥され、おまえとその民族が滅び去る日が来るまでそれは続くことになろう。
ではまた皆さん、メルシーボーク、メルシーアデュー。

花嫁 f
ああみんな、あたしの家くらい苦しみだ。あの白い花をつけるリンゴの花に言ってやって、私、誰の血だって見たくないって。ほんとうよ、だから私にその血にさわれなんて言わないでほしいの。でも、私の息子、私の内におりたって再びおびただしい無数の幼い息子達になってこの私の国家にあふれてくるまで、わたし負けたくない! 私の嫁いだ家の祖母達のまた祖母達々に。

乳母
人類は血によって運ばれる。サルは商人に殺され、商人は浮浪者に殺され、百姓はその浮浪者を殺し、学校では、小学生達を殺している。企業は芸術家を殺す。官僚は革命家を殺す。官僚は百姓に殺される。百姓は宗教家に殺される。宗教家はサルに殺される。そのサル達をおまえさんは産んだ。(サル達を指さして)ああしていくつもの性をもった生物は、股間から身を引き裂くように、心という心に噴き上げる淫液の激流のもとをコップに戻すことができずにいる。

花嫁
私がそのコップ

乳母
コップが砕け散る空という空へ。

花嫁
私がそのジュノーのミルクを入れるみえないコップ。私はまた気に入っているの(放送をマネして)今はまだ小さいけれど、やがて大きくなる「私の大きさ」を、「見えざる親方」のペニスそのものの「大きさ」であることを、私の裂け目、ワギナ、ジュノーのミルク、ミルク入れ、ジュノサイド、ジュノサイド………おびただしい息子どもの死体!!!が隕石のように降り注ぐ、この家には!

乳母
もうチャンネルを変えて!おまえさんの心を変えるのよ!

花嫁
誰がどう言ってもだめ、降り注ぐその隕石の一つ一つが、この家の中で私の血を浴びて一つ一つが新しい言葉になって生まれ代わり、その一つの新しい国語の体系になって、私を飾るわ。私がそうさせるのよ!私の心を修正なんかできっこないんだ。私と私の子孫には入るべき墓などはない。やがて生まれくる新しい国語人々の心に生まれ、心に消える。それが私のつくる新しい伝統!私の国語、私の誇りよ!

白猿達、等間隔にロープで結び合って四人坐っている。
ロープの端が美母神に結ばれて、巡礼のように花道を移動してゆく、他のサルあわてふためいて散っていく。

乳母
しっ、静かに、国語ならもう私達は持ってるよ、あんたはひどい殺人者におなりだよ、息子の死体だけじゃない、あんたのだんなさんになった男はみんなああして殺されてっちまう。あんたの中に種だけ蒔いていくだけで、誰ひとり最後まであんたを自分のものにした男はいない。一体、何故なんだろう。この星中を走り回ってあんたはだんなを見つけるけど、次から次へとみんな消えでっちまう。

花嫁
いいの、オスというものはね、風に吹かれて、来ては去る花粉みたいなもの。ああして私というめしべにも触れずにいってしまうのも多い。でもちゃんと私を飾る新しい国家の中に新しい霊となって戻ってくるのです。私の官能はもう国家が規定した破滅ラインをとうに越えちまってるのよ、だから方々から訴えられ、こんな強迫を日に夜に受けるのね、いつまでも花嫁のまま殺されていく、私は人間じゃない、花嫁という犯されるための機械だ。
でもいいの、それで──。
だけど、最高裁の決定によっては無実のままの私、何百年も何万年もずうっと監禁され続け、いのちを逆流されるこの家の時間を逆のぼって行って、ふと気づいた時には、この家の玄関先で飼育されているあの万世一系の老いたサル達の仲間入りして産めよふやせよとファックしっぱなしなんてことになるのかもしれないのよ、恐しいことね、いつそうなるかも知れないもの。

乳母
ああそうですとも、最高裁がそういう差し戻しの判決を出したら、すぐそうしなくちゃだめだよ。この宇宙で起こることは何だってわしらの最高裁が決めて下さるだにな。

花嫁
このまま私、ここにこうしていたい。赤坂離宮には帰りたくない。何もない劇場の中で一本のふるえるめしべとしてオブジェのままふるえていたいわ、私達のための新しい国語が話される時が来るまで。

乳母
おまえさんたら!ほんとにガンコなんだから、まるで人間じゃないよ!

花嫁
私は息子達のための新しい国語を生み育てるゆりかご!いくつもの劇場をそのぬくもりに持っている。
私の新しい国語の体系を決定するのは、あの最高裁なんかではない。その国語を話す最初の民族は私の息子だった。だから奴等は私の息子を殺したのだ。あの万世一系のサル達が覚えるより先に私の国語をただの気狂いの悲鳴だと言いふらすために、その証人を消し去ったのだ。

白猿A1〜4
あのすいません、ちょっとうかがいますけど、最高裁はどっちですか。

テロリスト(サングラスにスーツ)
こっち

(と、振り向こうとしたところを、ブスッと)
以上を4 回くり返す。

乳母
さあ奥さん、大変よ!いそいで帰らなくちゃ、昭和が、昭和!が終わったかも知れない。家へ戻ってTVを見なくちゃ、さあ早く早くするのよ!

(と、警官隊がメカニックに通過してきて、シーツをかぶせてA1〜4をかたづけ、そのあとに四つの石ころをおいていく)この時、花道からステージからサングラスをかけた男もう一人が、いくつかのサインを出しつつ、行きつ戻りつしている。
白いカーテンが急速にゆらめく。

(スピーカー)
ON AIR のTV、ラジオニュース、野球実況、歌や笑い声のクラクション、その他が次々と入ってくる。
同時にいくつものソースが入り乱れ、ノイズィな空間と爆発が起り、高らかなトランペットが響くとともに、BGM(シンセか何かでテクノポップ風)越天楽のバリエーション。

〈第四場〉大地母神誕生の儀式

1〈小枝献納〉
二人のお百姓さんが整地の草刈り
大きな菊の花輪らしきもの(吊り)まで、上下左右にゆれる。次に鏡がおりてくる。
劇場のドアから黒子によって一本の太い棒が出たり入ったり。ステージのシーツの中から4人の巫女になってあらわれる。
シーツだと思ったらドレスだった。白い鳩がとび出す(音楽)ステージに次第にまぶしさが増してくる。
ボーイ・ソプラノのコロラトウーラみたいな(音響)鏡がはねて上に上がる。
上央奥に埴輪のような大地母神が笑えんでいる。
四方の四人の男神、それぞれ独自な歩行法や身振りであらわれ、小さな血のついた小枝がつぎつぎと捧げられる。
「星からの悪い知らせ」のまほろばの女の子達(そでから顔だけ出しでもしくは2Fからか)

───
まあ、今日のお庭はいつもと違ってとてもきれい。赤い葉鶏頭があんなにいっぱい……

2〈小枝の注視〉大地母神に枝にかぎられながら“小さな森”のよう。
音楽、次第に高まりついに破裂、と四つの石ころもとび去る。と、ひとしきり大地母神句“小さな森”から抜けでて二重らせん形的運動が起こる。
核分裂と核融合の象徴。


たとえば古事記のはじまりの一節。

暗くなる。

〈第三場〉身篭りの儀

四本のろうそくと四人の処女がステージにいる。
───
誰のところで花婿になるのかしら、すめらきは今夜
───
今夜は私がペニス入れよ
───
いいえ、わたしが今夜は花嫁よ
───
いいえ、私!
───
ペニスが一つでペニス入れの方が多いからいけないのよ
───
でもさ、遅いわね
───
眠たいわ、もう
───
早くしてえ
(とかいいながら次々にローソクを吹き消していなくなる。)
───
あたしはあのひと来るまで火をつけておく。そしてじっと息をひそめてまつ。まつわ、待っているわ。

(希れ人は去る盗み人のごとく)

Aoi精液を満たした大きな水ガメを頭上に捧げ、上・下前後を2往復、しずかに舞う。奥から、残りの女性達も同じポーズで現われ、下半身を馬のようにけいれんさせつつ、ステージをサパティアート。
一人残っていた処女激しい喜びの身振り。
ダンス ソロ
アレンジの効いた「君が代」が入る。フォルテシモ

〈第五場〉いけにえのパフォーマンス、ホモ、レズ、姉弟の心中

警官隊がヒモをもって囲っている中で、美しいダンス、美しいダンス。
悲歌
例えば、次のような和歌もどきで愛を稚びに交わす。
一九六八年十二月、安田講堂は落城す。その夜二五番教室でオカマを抱いた我が肛門に激痛のいやしけに走れり。
一九七〇年十一月、市ヶ谷自衛隊のいやらしき草むらに眼見開きし生首一ついて、身じろぎもせず我を見すえたり。


七重八重、肉のよろいにつつまれて
膜切る彼をいずくに置かん。


その生首もて、足もとに心ゆくまで身悶えよ!
浅間山麓の愛は敵弾のはじける如き処刑場にてあらん。
───
そのいつわりを吐きたる口の腐れゆかん。
汝が愛は醜いパンをふやすパン種。
───
舌をもつ生き物が、その舌の根止まるまで放つ
声音にぞ我が言霊は秘めいたり。
───
美しき人とともに、釘づけされし、盗人等の苦しみは「汝の隣人を殺せ」と今も我にささやきにけり。
───
汝、その虹色の庭園より出でて、「自ら一握のライスをつかめよ」とマルクス・レーニン、マルコス、朴、毛沢東等の道徳の盗人あまた来たりて我にも告げぞ。
───
それを聞きし我はいま苦悶の虹に染まりゆく。
その獣等の霊は皆、この胎内より出でしものなればなり。
───
「女の胎から生まれたもので、彼等より大きいものはない。だが、余の庭では、いかに小さきチリでさえ、彼等よりは大きい!」とかのひとは言えり。
(二人とも犬のように戯れつつ)
美しき両性具有の犬を“天皇”と名付け、飼いいたる老フロイトの嫉妬に燃える青白き眼!
───
菊なるかな、菊なるかな、テニスコートに捨てられし、みどり児の魂はかえりゆく。祖霊とともに白きネット越え。
───
「陛下、三島由紀夫が自決なされました」
───
そうか、よくやった。だが、自決したくば勝手に自決させよ、朕は生殖の神にてあるも革命の原理にはあらず。
───
長子偏愛されおり、暑き庭園の地深く
根腐れゆくダリヤ 邦雄
───
君が花摘むごと、我が皮膚にみみずばれの走れるは、この庭の草木の一つ、一つに高祖高宗の霊は棲みいて、我を罰せるか
───
いまし南方の海はよみがえり
色白き内股に青藻からませ、青年は巻貝をとる
我のため
───
おおわだつみよ、おお老いたる天体よ
極北に輝く数字よ、豊かなる磁力あふれる
閉じ込めの国体に、この星を遊ばせているおまえを我は尊敬する
───
我が女陰に、にじみいずるが如く、ナパームに焼けただれつも、ゴムは樹液をふきにけり
その膣壁に爪たてて血を吸いたしと
渇きつつ泣く、胎児のきみは
───
いまし我は凍てつく白刃、君は霜降り治めるさやなれば、今宵しずかに温もりゆかむぞ
───
待って、USの兵士来たりて我を抱きしなり
その夜、見よ燃えあがるこのオルガスムスの火の一滴
───
父母の臼挽く腰の官能に、我は汗ばみ、のけぞるはきみ
───
家荒れて、喰うものはなし
しくしくと痛む腹かも
───
国廃たれ、鳥もあそばず、ちちと鳴くのみ
ちちのみちちはいまさじ、ははそばの母は悲しき玩具なり
はらからの我と我が姉、日に夜に身も心も罵えにけり
───
怒ります母刀自見れば泣き濡れて
くどき終えり、そこゆゑに母のかなしさ
───
ちちのみの父はいまさじ、たらちねの母もいまさじ
ただひたすらに、ハエはとび、ハエは死ぬ
───
宇宙は自らで自らをむさぼりくらう
君は知らずや、官能に喜び死ぬこそ帰ることなり
生まれしときに帰ることなり
───
夏来たり、たましいを君の息の根深く打ち込みし
太股にからむは毒ヘビ、ほとにわくウジ虫
何たるけがれぞ
───
自らのよがりし声におどろきつ、よるべなく声繰り返し
草はむきみの歯の根は白く
───
姉さんっ、そこにうんこしちゃだめ、ハエがとんでくるから
───
彼方の杭にのぞきたる、それはわがまほろばか
かそけくも妙なる音のするなり
いざともに入りゆかん
───
天なるかな、天なるかな、紅白に引き裂れし
青空の裂け目にのぞく美わしまほろば

(この四つの間に、花道に黒のロングドレスで着飾った神達が、大変メカニックな葬送の歩調をとる)

M
AII Deadi!また見えた何が万世一系の永遠が、我が子孫らのつながりゆきでは我に帰るを
───
我が墓はまほろばのみどりなり
我が墓はまほろばのみどりなり


汝しなく、極楽いかで、極楽ならん


汝しなく、地獄のいかで、地獄たらむ

〈第二場〉家庭劇

アンテナ付に奇妙なホームドラマが始まる。
ある家族(父・母・子供)がテーブルを囲んでいる団らん図が映る。


坊や、その椅子の上のハサミをとってちょうだい。

息子(ヒ口ヒト)
ここにはないよ、母さん。


じゃ向うのお部屋を探してきて、ねえ優しいあなた覚えてらっしゃる。あの時、お祈りしたわね、子供をおさづけ下さい。そうすれば私達もう一度子供の中に生まれ変われるし、老後の支えにもなるでしょう。


覚えているともさ、全能なる日本民族の精霊達がわしらにかなえて下さった。この世での運命についてはもう何も不平は言えない。毎日民族のおめぐみを讃えることにしよう。わしらの一人息子は母さんの優しさをすっかり受けついでいる。


それにあなたの男らしさも。

息子
はい、ハサミやっと見つけたよ。

(子供は勉強をはじめる。アイウエオ、カキクケコ)


ああ何故かしら、わたし胸さわぎがしてとても落ちつかないわ、それに空気がやけの重苦しいの。
───
おまえもか、わしも何かいやな事が起こりそうで、ぞっとして来たな。さあ日本民族を信じてよう。日本民族の精霊達には、この上なく高い○○が宿っているから。

子供
母さん、ぼく息が苦しい。それに頭も痛い。


まあ坊や、おまえもなの。まあ何て青い顔(ぐったりする)いま頭をお酢と梅干しで冷やしてあげますからね。
───
ああ母さん、こわいよ。
───
どうしたの、そんなに苦しいの。
───
うまく言えないけど、何か体がひどくヘンデル、頭はすっかりブレーテルなんだよ。
───
ああ!またあの呻き声が!声は聞こえるが、主は見えないんだ。あの叫びは、村から村へ、国から国へと生きもの血にのって運ばれ、太平洋の向こうからでも、シベリヤの奥からでも聞くことができるという。あれは我等の誇る全能なる日本民族を滅ぼそうとしているらしいとも言う。この悲鳴は日本民族の長い長い時間の渦巻きの中から聞こえてくるようだ。そして安らかに眠るわれらがわだつみの同胞の心をひどく掻き乱しているという。万能なる日本民族よ、我らの血に天皇という神が生まれることが、この国の禍いになりませんように!あの男はどこへ行ってもひどく嫌われ、国から国へと血を吸いながらさ迷っているらしいし、またある人々の話では子供の時から生まれつき一種の狂気にとりつかれてしまっているらしい。また、ひどく残忍な性格をしていて、それを自分でも恥入ってすっかり姿をかき消し、残りの人生を何の慰めもなく不幸のかたまりとなって生きているんだとも言う。また夜な夜なあの男の枕元には亡霊たちがとりすがって、奴自身が神であることを嫉妬し、ののしり、恨み続けるともいう。
───
ぼうや、おまえの年で、こんな悲鳴を聞いてしまうのはかわいそうだけど、これにはきっと何か特別な深い意味があるのよ、ね、お願いだから大きくなってあの男の真似なんかしないと約束してちょうだい。
───
ええ、ぼくをこの世に生んで下さった母さん、ぼく約束します。子供の約束でも日本民族の精霊にかけて誓えば値打ちがあるというなら、ぼくはあの男の真似なんか絶対にしません。
───
いい子ね、わたしのヒロヒト。
───
おまえ仕事は終わったのかい。
───
この下着の繕いがまだやり残しがありますの。ずい分夜ふかしをしちゃったけど。
───
わしもだよ。読みはじめた偉大なる日本歴史の数ページが終わっていない、ランプの最後の光を利用して仕事をやっつけてしまおう。油はもうほとんど残ってはいない(ふわと明るくなり、くらくなる)

息子
物みな創り主たる日本民族とその精霊たちよ、どうかこのふるびた天体という建築物の中で万世一系という灯をともして一つ調和をつくり続けて、ぼくらを殺さないで下さい。もう少し生かして下さい。せめてぼくの両親だけでもお守り下さい。
おいこれでもひっこもうとしないのか悪霊め!


何言っているんだ幼いヒロヒト、いまおまえの両側にいる男と女こそが、おまえの両親だといっておまえを引き裂き、骨を砕き、おまえを殺して食ってしまう張本人なんだぞ、さあいまからでもその家を抜け出してこい。そして俺と一緒に世界中を旅行して歩こうじゃないか!そして永遠に抱きしめ合っていよう。■と■(編注:■解読不可能)を原子のすきまもないほどピッタリ合わせてお互いにも心も血液も精液もまぜ合わそうじゃないか。
───
お母さん、息ができないよ、だれかがひどく首をしめるんだ……くるしい、なぜなの、ああ……(明るくなる)
───
どうしたのぼうや誰もいやしませんよ。あなた、あなた、この子の息が変です。息をするのを止めちゃったわ、心臓も脈打つのを止めてしまったわ、あなた!

〈第六場〉「パンとテーブル」のパフォーマンス

大正天皇A1ー4(白猿)ひとかたまりになって痙攣している。

「母」(胸をはだけで)パンを千切り与え1体4で食事がはじまる。
A1ー4 パンクズに対してパラノイヤ的挙動。
A1ー4 空中のチョウチョやチリやハエをジャンプして食べる。疲れ果て母神に群がりつく四匹の猿のように。

女中達が入り五大新聞をもってくる。新聞紙が空中を乱舞。
と、若い皇子通りすぎる。母にみつかってとっさに走り去ろうとする背中に、


おまえは、ここへ入ってきてはいけません。私はまだ朝の体操を終わっていませんのよ。

A1ー4
(父である)苦しみ出す。それを見てニヤッと笑い、母いなくなる。

再びそっと皇子現われ、苦しんでいる父達の腕にささっている血の枝を抜きとってやる。それを花ビンのようなポーズする女中達の胸に刺す。

「権力の移行」───(TVではロシア革命)

母現れ
───
私の許可なくおまえはまだ父と面会してはいけません!

突然、母呼び子を吹くと警官達が現われ、皇子を捕縛して地下室へ、女中達激しく堂々めぐりしながら抗う。
息子、母を立ったまま犯す。女中達王冠を皇子にかぶせる。それをみてオナニーする父達。

〈第7場〉「最初の父と子」

(父は壁や床を空気のように通過してあらわれる)
(黒子によって手動スクリーンが上手から下手へ移動している)

ヒロヒト
そんなものをどうするのか、やけに白くて大きいが。

黒子1
どうもこうもない、世界歴史はすすんでいく、すすむ方にこれはすすむ。時々光より早く移動するよ、そのうちおいついてきた世界歴史をここへ書き記させてやっている白色の出現だ。

黒子2
完全な白色だ、あらゆる白さという白さを超えた白色、白色の出現の何という白さ。白い以外の色とは全く妥協の余地のない白以外の色をいっさい排除し、完全に根こそぎした白色、興奮し、激昂し、白さで絶叫している白色、残忍で執念深く人殺しの電流のように素晴らしい白色、白色の疾風のような白色、白色の《神》、否、神なんかじゃない。わめきたてる猿だ、こうしてしばし白色はいま停止する。

黒子3
誰がどんな風に書きこむかは世界のかつの俺達の知ったこっちゃない。

ヒロヒト
第三次世界大戦はまだか? 

黒子
まっ白だろ、だがおまえさんのかげが映っている。おまえはいやな奴だな、歴史のかげをそうして息しながら生きているなんて、ひょっとしておまえ天皇かなにかか。

ヒロヒト
そういうな、朕は世界歴史の余白に映る、いまはただのかげ。

(スクリーン変な位置で止まり運び手もかくれる)

黒子
ひとが教えてやったのに、おかぶを奪いやがった。よし決めたこれはしばらくここに置いておく。おまえさんは、たぶんその自分の影を何かしでかすぜ、うしろから来る世界歴史につかまって首でもチョン切られろ、ははは。

ヒロヒト
いやな奴らだ。おれはそんなものいらん。

黒子
ははっ、おれ達は人間じゃねえ。

ヒロヒト
じゃなんだ!

───
おまえさんの脳がつくる錯覚さ。

ヒロヒト
錯覚?錯覚は等しい。
───
そうとも、おまえ達は錯覚が大宇宙をつくり出し人殺しして消えてゆく影と錯覚の父子さ。

父(踊り手と声)
(ふいに)おいっ、おまえが息子か? おまえはどこからみても人間そっくりだな、わしらはまだ美しい青い猿のままだがな、もっともわしらは気の遠くなるほど長い長い間自分の中にいる人間を食いながら生きてきた。少しづつでも人間になろうとな。やっとおまえの代になってどっから見ても人間らしくなってきた。あなっうれしのわざ、やっとこのいまわしい血の呪いから浮かび上がれる息子をもてたのだ。長い長い間、わしらうすぐらい血の池の中のぼうふらだった。
───
パパッ
───
パパッなどというな。パッと言ったときツバがとぶでしょう? わいせつにも生温かいつばがエロチックにも飛んできて。このつばがパパの肉体とつがいあってとんでもないじゃないか。こわいものだよ、有機物というのは、ほれもう聞こえてきた。

花嫁の声(3Fから)
「私の性欲よ急げ……わだつみはまだか、おそいっおそすぎる」

と、この時、スクリーン裏からぞくぞく赤い服装の兵隊が出てきて、堂々めぐりであらぬ方向へ去る。
父、急いで、そこらの高い台の上に上がって痙攣する。

───
おまえの花嫁をむかえるんだといってな日本列島中がいまやーコの「軍事基地」になってしまいどんなちっちゃなわいせつな事件が引き金になって日本中が爆発し、世界にとび散ってしまうか知れない状態になっている、まるで火薬庫に住んでいるみたいだ。
───
誰がそんなことなさっているのです。
───
こんな薄ぐらいところへ朕を監禁して平気でいる連中だ、たとえばみつびし、たとえば新日鉄、たとえばナショナル、ニッサン、トヨタ、NEC、大企業と肉屋達のつくり出すいかがわしい関係ぬきには万世一系のそれらも生きのびられないようだ。全く政治家は何をやっているのか、あの嘘付きどもは。
───
そういえば、彼等は玄関先でサルを飼育していてかってに売りさばいて脱税ばかりしています。
───
してその脱税の金も嫉妬深いユダヤ人にだまされてもっていかれているのではないかい? シオンの娘等め、やつらは彼等の涙の美しさを知らぬから平気で我等が青空を引き裂きゆがめるのだ。朕は心の底から泣いている。青空に美しい性器をおし気もなく広げてね、身体は日の光に溶けてゆく。でも青空に悲しみは届かないのだ。原始的な性欲が猛々しい。嫉妬を神権と崇拝している。死の恐怖だけにかりたてられ、いのちを利益に還元するまでは、死んでも蠢めきまわっている。この点はわしらの大企業と同じだがな、もっともユダヤは涙をしみこませる土地をこの星にもってないからな人間とはいえぬ。
───
血のしみこむ家もないのです。
やつら、いつもこの白いスクリーンの後ろにいる。決しておもてには現われない。なのにいつの間にか、あそこいらにすわっている連中(観客に)をセックスごとあやつっているんじゃ。米、中、ソをあやつっているのもわれらでなくユダヤ人かも知れない。やつらはその気になれば地球上を自分の庭にする気でいる。世界中を原爆で焼けただれた石ころだらけにしかねない、それを片っぱしから買い集めて平気でなまあたたかいやわらかなパンだと言って売りさばき出すでしょう。それをおいしそうに奪い合いながらむきぼりたべるへんな人間そっくりの生物ができてくることでしょう。自分の子孫繁栄ぐらいしかできずにいるというのに、なのに日本のいかがわしい政治家どもはせいぜい子飼のサルをいためつけて、そして朕等をもその繁殖用のサンプルとしてこの薄暗い地下室に監禁して何やら万世一系の生物をつくり出すために染色体変換の実験をしているようだ。
───
おかげでわしはすっかり大脳が狂ってしまった。
───
厚生省、文部省、科学技術庁、文化庁、宮内庁、防衛庁、みなバカと怠け者のあつまりですから、くだらない闇をつくり出して、その中にしけこもうというのです陛下。
───
息子よ、そのうち朕自身が生命体をつくり出す暗号になってみなみなの血や精液や卵子の中に入っていってこの国の生命のそもそもの源からつくりなおしてやろうと思うのだ。すばらしいアイデアだろう。だから、おまえも生物学者になって生命そのもののしくみをよく研究しておいてくれ、いいな、なんていうすぐれた大いなるプランだ。うれしくなってきた。はははっ、というのはな、わしはパンなのだ。日本民族は余を引きさいてみんなで、食っちまったんだからなあ。ここにいるわしは俳優にすぎん、朕ではない、ほんとの朕は日本民族のその肉体の中で生きている。その中で未来永劫息し、呼吸し、脈打っている。みにくい政治家どもにやつらは毎晩悪夢となっておそいかかり、苦しませもすれば、死に瀕している子供達がいれば、えもいえぬまほろばへいざなってやり、永久のいのちを与えてやっている。すばらしいサーヴィス業にいそしんでいるのだ。ははっ。(いなくなる)

ヒロヒト
母さん、ぼく水になりたい。そしてかあさんぼく父さんの身体の中に入っていって父さんの涙になってなぐさめてあげたいんだ。父さんの枕にしみこんで、そっとぼくの心をその枕刺しゅうしていろんなことをささやいてあげたい。そうすれば父さんはきっと人間になれるよ。母さんぼくは天皇になんかならないよ、軍事と資本とセックスをあやつる神さまになるなんてそこいらのサルにやらせてよ。

母の声
(仮面をつけた紳士達とたわむれている)
呼んだ、かい? 

ヒロヒト
いいえ呼んだりなんかぼくはしません。

《第2の父》(イエスのように)

───
息子よ、私を殺そうとしている大逆事件の人々や過激派の連中をいじめたり迫害したり、とりおさえて死刑にしたりしないようによくよく国民政府にいってきかせなさい。私はおまえの父として万民平等の思想を高く評価しているし、自らそれを行いたい。だからこうして現われた。

ヒロヒト
ああ、ぼくは夢を見ているのか、さっきもそうだ。いままたこうして。

母の声
おほほっ息子よ、私を呼んだかい? 
───
いいえっ母さん、あなたを呼んだりなんかしません。
───この私の考えは、私が死んだ、あと、おまえが実現するだろう。わしは水になって世界中に人々の肉体に入っていって涙になっていよう。おまえの仕事がうまくいくようにその準備をしておくからね。わしはすばらしい考えをもったがゆえに国民から気違いにされてしまった天皇だ。ゆめゆめ忘れたり、臆病になって知らぬふりをしてはいかん。わしの変わりに復讐をとげておくれ。わしはおまえをまっている。やがてわが家から立ち現れてくるでしょう。すばらしい平和憲法という世界をつつむ平和な揺りかごの中で一人の幼子となってわたしはよみがえり、知れずと知られようとその日を新しくこののち生まれてくる人間達の体の中にまっていよう。
───
生きているのか、死んでいるのか、ああ分らない。だが今聞いたことは、たしかにおれ自身の運命だ。偉大な予言者でもあられる父さん、それに較べると、三菱、三井は全くまむしとブタの集まり、日本史年表をみれば分るように。

母の声
おまえは偉大なる日本歴史を勉強しているのかい? 

ヒロヒト
ええ母さん、たぶん生きている歴史をです。母さんには見えないでしょうね。ぼくの心臓を、しめつけてくる眼にはみえないけれど、力ある2本の手、真実しかうたわない弱々しくも美しく金色にかがやくあの唇が告げる未来の世界国家を、ああ母さんは父とベッドをともにしていても分らないでいる。

母の声
ヒロヒト、私を呼んだかい。

ヒロヒト
いいえ、いいえ、いいえ、誰がこの美しいひとときに悪霊の名を呼んだりなんかするもんか。

〈第3の父〉(青いみどりの血にぬられて戦のかっこう)

おおい息子よ、聞こえるかあ、わしは人々の五官に棲みついているいまわしい官能の化物どもと戦いの最中なのだ。「霊と霊の戦い」は全くもって、ああ、わしは負けるかも知れない。私が死んだあとは、大企業と宗教団体を操る連中に気をつけておくれ、やつらは朕を神にした絶対侵すべからざるものとした。が朕がじゃまなのだ。だから朕を穏蔽し、かわりに自分達の企業権力をよこしまさを絶対犯すべからざる神聖なものとして国民に君臨してしまっている。やつらの五官は化物の棲むほら穴だ。再び、全アジアをじゅうりんし、好き放題の一大犯罪国家にし、朕の王国をすっかり別のものにかえようというのだ。わしが殺される、その時がやつらが世界中に大戦争をいどみはじめる時、息子よあの悪霊どもの手からまほろばをとり返せ、ああ、いつからやつらはこんな「殺人力」をたくわえていたのか、朕の知らぬ間につくり上げたこの「殺人集団」をやつら国民の花婿とする気だ。ああ時間がない、夜があけてきた、これが最後だ。おまえが花婿にならねばならぬに、おまえがだ、よいな!

(白装束の巡礼の一隊、二人の百姓を殺して食いながら通過)
(白いスクリーンの出っぱり静かにステージを横切ってひっこむ)

〈第入場〉閣議

仮面1
父陛下のご病状はどうですか。

黒子
病気というより、生まれつき、いえ生まれる以前からすでにあまたの神々を御学習、御経験なさっているからでしょう。父には貴方がたのつくり出した天皇という職業を演じるのが好みではないだけの御様子です。(TVのスイッチを入れる)

TV
「わしは世界歴史をすすませる歯車だ。ほれ廻っている。床も天上もぐるぐるまわっておる。わし自身では止められぬ。はははっそれにしても息子よ。我が国では霊魂と霊魂の戦いほど血なまぐさいものはない。とてつもなく寧猛なエネルギィで襲ってきては、わしのこの純白な身と心をこんなにも引き裂き血でけがし続ける。ついにわしを食い殺そうとまでする始末だ」

仮面2
もっぱら御自身のエネルギィの陰部をもてあそび、ナルシズムにふけりなされているというわけですが……「やがて人類は一つかまどにくべた一本の柱の如くならむ。我等が天体に最初の人間の精神が点火された世界にあまねく証を告げんと」さすがは御頭脳でいらっしゃる。

仮面3
いやわしは子供の頃から彼をよく知っている。あの頭脳には恐ろしい程、未来の中心に向かってふしぎな愛に満ちあふれたすばらしい平和理念をおもちになっていらっしゃる。この点に関しては我らは足元にも及ばないが、困ったことに、容赦なき世界戦略の渦中におかれた我が日本国の現実状況を御理解なさろうとして下さらぬことだけ


(踊りながら)ははっはっはっ(白い巡礼達とともに現れる)おまえ達は、余の身体をチリチリに引きさいて、一億に食わしてしまったらしいのだ!でも余はそのことで、怒ったりはしない。わしの身と心はそのまま一億の未来となってそのまま生き続けていくといううまいぐあいになってくれたわけだ。発狂してるのは余ではない。おまえ達だ。ほれ政治家に大企業どもに憲法違反の軍隊とそれにいかがわしい宗教家どもも一緒か、なんだ今日はみんなそろってどうしたんだ。
最近は宇宙の講造もなにかとんでもなく変化してきているそうだからな、めいめいの頭じゃどうしようもなく鳩ぽっぽ達が首を集めてひそひそと世界の天気予報を御相談というわけですか? ところでそこの大企業よ、わしは腹が減ったぞ。それというのも、おまえ達が日本を食糧すらも自給できない国にしちまったからだ。鉄やプラスチックだけの、ひたすらガソリンが燃えるだけのつまらぬ国にしちまったからだ。
だれがこんな文化もない先進国にしろと言ったですが、おい、ミツビシ答えろ。

仮面1
…………


何故黙っているのか、くらい重力よ。

仮面1
はっ、おそれながら世界資本主義経済原理に我らはのっとり日本国民の心と、衣食住セックスの向上に相つとめておりますです。


では世界経済原理は誰がつくったか。

仮面2
すでにそうなっておりましたのです、誰がつくったともいいかねます。

仮面3
我等地を■(編注:■解読不可能)う人類の自己保存欲望のエネルギィと分配の諸法則にのっとり。


そうすると、おまえ達は誰がつくったかも知れぬそのわけの分からぬものにのっとって余や余の日本国を向上させ、自己保存欲望、それぞれの稼ぎ高によって分配しているというのか。

仮面3
まあ、そうとも言えますな、それゆえ人類は日夜世界経済原理という一つかまどにくべられ自らその火柱となって、エネルギィを生産し、かつ消耗し、燃え続けております。


宗教家よ、この点どう思うか。

仮面4
はっますます、その人間の業が燃え尽きますとき世界全体悟りがひらけます。


じゃ余もそこにくべてくれ。

仮面4
おそれおおくも……すでにおくべになられておいでになりますです。

仮面
偉大なる精神安定サーヴィス業としてその業をおもやしなされておりますですな、世界に二つとない美しいエネルギィでございますので、大変重宝しております。


ほほうそうか、どうもありがとう。でもおまえらのほしがっておるウラニウムよりは余のエネルギィは美しくないのではないかな。
───
どういたしまして、陛下のエネルギィこそ、人々のからっぽになりかわいた心にかわいた水のようにしみこみ、うるおうものです。
───
それは詩人や美術家の仕事だぞ、余よりも有能な人々だ。余だけではないし、余ひとりのエネルギィでは間に合うものではない、嫉妬深いおまえ達は、本来なら職人や美術家がなすべき仕事を彼等からとりあげて物品売買の宣伝用のコピー労働者にしてしまい、国民の渇いた心をいやす涙のサーヴィス業を余ひとりにおしつけ、二四時間働かせ続けているではないか。
一生懸命そうしている余の心をでは誰がうるおすというのか、我が国にはもう余の心をうるおす詩人さえもいないのだ。
余にTVCMでもみて心をいやせというのか。
(独白)
誰ひとり新しい芸術をつくろうともしない。新しい詩人達も生まれてはこない。みな自殺してしまった。もうニホンは国ではない。単なる下品な利害追求集団におちぶれてしまっている。(泣きながら)(かつ微笑みつつ)
やがて真に天照らすものがあらわれ、そこらへんのチリや石ころからさえ無数の芸術家をあらわし下さることだろう。しかしそれはこの星を最初からつくり直すよりもっともっと永い時を必要とするかも知れない。(静かに踊り出す)

仮面
(突然)陸下もうお休みの時刻でございます。
───
いつかはそういう言葉を聞くときが来ると思っていた。日一日一日とカマドの中で燃え尽るのを待っているのにもあきあきしていたところだからな、魂の永久の休み場へ行きたいと思っていたところだ。ヘイカオヤスミノジカンデス。
おい、そこの白塗りの仮面!余の先祖はサルだった。その前はモグラだった。モグラは地下から劇場にあらわれる。こうして天皇にもなってみせられるのだ。だから、余は人間だぞ。それにひきかえ、おまえ達はハチュウ類がそのまま人間そっくりのかっこうをして出てきたにすぎぬ。だから亡霊だ。ひっこめ!墓場の中へ!地球の奥深くひっこめ、本来なら今頃そこで石炭やガソリンになって自分の工場のエネルギィになってちょっとばかりモーターを動かし燃えちまっていた生物にすぎぬおまえたちだ。

(四人の仮面、父を連れ去る)


でも息子よお聞き、もうすぐお前が父に代わって神の座に入りますとき、日本国家がお前の花嫁ですよ、ほらその窓をあけてごらん国家のすみずみまで、トヨ夕、ミツビシ、ヒタチ、ナショナル、世界に誇る優秀な花嫁化粧が施されて、おまえの精液を求めていますの。

仮面
そしてその化粧のおわりには四十億人類が婚礼のいけにえとして、この天体に捧げられることでしょう。


何千発という核ミサイルがおまえとおまえの花嫁を祝福してくれるのですよ。

M
日本よ、おまえ私の息子の花婿におなり、ほんとにうれしいことです。我等のように終わりなき万世一系の家に生まれしものにとっては。
───
うすうすは分かっています。が母さんは気が狂っています。
───
そんなことはありません。我等は米ソ世界支配の時代を終わらせねばなりません。いまからそっとこの二大国を敵に回し、イスラエル、ドイツ、中国、ニホン、この四国で共同世界支配の時代をつくり、そのリーダーシップを我らニッポンがとらねばなりませんからね。
───
まっくらだ、母さん。
───
そう私、まっくらが大好き、息子よ

(母、息子に接吻する)
(と再び白装束の連中、花嫁を抱き上げ、母の息子のまわりをねり歩く)

私は人間の行動を司どる闇の振付師、それを大企業が盗んでいって猛スピードでそれを即興コピーしながら世界をおどらせる。宗教団体家が、すりきれた労働者の悩みや情緒を眠らせ、率直にさせる怯えやる政治家どもには米ソをだまして核兵器付の軍隊をつくらせている。これで自己保存能力は完全……

(走ってくる父、追いかけてくる四人)


おおい今日は何とも調子が良い。少し休んだからな。変な注射をいっぱいうたれた。体中の細胞が生々しとる。おはよう、おはよう、みんな富士山頂にのぼれ、山頂の石蹴りとしゃれよう。

(母、息子を退けさせる)
天気予報入る。
北の風風力3、金華山沖波高し……とか


お互い孤独だからなあ、余が歌をうたってやろうか、あーいーうーえーおー、あーいーうーえーおー、富士山よ聞こえたかあ、(テーブルに乗り石蹴りをはじめる)

M
余の妻は余の母で、余の母なら息子の嫁だ、息子の嫁は余の娘、余の娘は、息子の妻で、息子の妻は余の母だ、余の母なれば、息子の母だ、これで世継ぎはととのった。

あーっいーっうーっえーっおーっ
かっきっくっけっこっ

母の合図でテーブルクロスにつめて、そのまま包み、テーブルが棺桶にはやがわり。

母と仮面の紳士

M
新しき年のはじめの初春の今日ふる雪のいやしけしとど──おおっ、(三本〆する)

息子の声
わが一億の娘らよ聞け、わが父の人でありせば、かく美しきかりしにむごたらしき神となりけり。

父の声
呼ばれようと呼ばれまいと、我は存す。

(その上で裸の電球が一ヶ大きく左右にゆれているのみ)

〈第九場〉浄められた夜■

花嫁
(赤ん坊を抱いて登場)(ビッコをひきひき)テーブルの下に飾られた花々と宇宙のチリとが交した秘事!カーテンの裏で一切は論証され尽してしまった。
血縁が血縁を許さなくなって以来、いなくなった家父長のその部屋でドアーチェーンがひとりギンギンと稔りを上げる。家具達が家具達とだけみだらに交わすひそやかな指話、その梁線をもてあそぶのは私の赤ちゃん、私はただの血のつまった袋だ!

私の夫はまたひとり、消えたのかすかに受精の手がかりをあたしに残してね。
サングラスの男が通りかかった乞食どもに、
───
おいおまえ達、この中に犬がはいってる。ひどい伝染病にかかっている。はやいとこ屠殺場にもって行って門の中に放りこんで殺しちまってくれ(金をわたしていなくなる)
───
あいよダンナ、いつもいつもすいません。
───
栄養不良のくせにやけに重たいな。
───
つべこべ言うな、早いこともってってやっちまおうや、たまにはちゃんとした仕事するのは気持ちいいもんな。
───
だけどほんとうに犬が入ってるのか(スピーカーから赤ン坊の鳴き声)人間の子供みてえなうめき声がするな。
───
いいってことよ。
───
だけど心配だぜ。
───
じゃ、たしかめてみなよ

「父」が飛び出てくる(まっぱだか?)
───
(悲しげに)あーいーうーえーおー、あーいーうーえーおーと叫びつつ、空中に上がっていく。

(息子、走ってきて追いかける、猛スピード)
と、サングラスの男飛び出てきて、びっくりしてる乞食どもにどなる。
───
てめえらもな、この国でおもらいの仕事するならもっと十分気をつけてやりな。でねえと、今度はおめえらをこの袋のなかに閉じ込め、屠殺場に放り込んでやるからな。“全能なる我らが日本民族”に何でおめえらみてえのが生まれてくるんだ。くそったれの日本人めらっ。

(と言ってトランシーバーを取り出し指令を発す)
(国引きのアナウンス)
───
ふふっ、ヒロヒト行ってはいかん………
この世界はそっくりおまえのものになるんだぞ。


「ああ、それにしても何という痛み……………………………………星からの知らせP72」

浄められた夜

父とそのうしろから子(小児マヒになっている)

女性達、一列に並んで手に枝をもって振っている。
(街路樹)


なんという強い風だ、揺れる揺れる何もかも、何故かくも大地はその心棒を失ったみたいに揺れ騒ぐのか。


揺れているのは、陛下あなた様御自身でございます。


はは、わしが揺れると世界も揺れる。逆まく海だ、われて砕けてさけておちる。ああっ何故彼女達はああして泣きながら裸で手を振っている。


あれは女達ではございません。街路の樹々でございます。樹々でさえ悲しみのあまり泣いてございます。


樹々はしあわせだ。たとえ枯れても水にふれればよみがえるに、このわしは……むっ、この臭いはなんという生臭い臭いだ。


さるお方が亡くなって、その死体が放っている臭いでございます。


ははっ誰が死んだのだ。


陛下、あなた様でございます。


ははっそうか、“陛下あなた様でございます”が、死んだのか、不運なやつだなあ。太陽はな、一日、また一日と我々をろうそくで照らしながら、うむを言わさず墓場の中へひきずり込んでいく。
おいっ人間が死なぬとでも言うのか、人間は死ぬ、だから人間は不幸なんだ、余は人間は大嫌いだ!


陛下、貴方様は神でございました。

女達(街路樹)父とともに去る。

ステージに息子ひとり。■(編注:■解読不可能)と、もう一人の父と母と花嫁(イザリになっている。必死に父にとりすがる)登場。
───
あなたはあの時、おっしゃいましたわ“私は神だ。おまえ達人間どもの生活は全くもって死だ。それ以下だ。”と、そして、すぐにわたくしはあなたに申し上げました。“それは真理です。それを口にした故に、あなたはもし生きながらえるならば、生き恥を晒して苦しみ続け悶え死にを呼び寄せるでしょう”と。
───
ああ言ったとも覚えている。よくぬけぬけと言ってくれたものだわい。
───
イエスはもっとお上手でしたわ。御自身を決して神だとは言ってはいません。
───
嘘つけ! あんな人殺しめ。そのくせとんでもない女衒めが。神の中の神とでも言いおったか!
───
いいえ、ただひとつの神の大いなる空虚のただひとりの子だとおっしゃったのです。御自身をわざわざ子であると限定なさってお言いなのです。
───
同じ事だ。
───
いいえ、何と恐ろしい違いがここに秘んでいることを、そしてあなた達の間に何と偉大な傷口が開いておりますことでしょう。
───
無限定のどこが悪い。だがわしは三八年前大戦争をしてやったのだぞ。奴はどうした? 十二人の嘘付どもは? ふん、わしの祖霊どもの血を染色体を沸かして、皆長年の束縛から解き放ち、海という海を同時に清めた。鉄を浮かべ、鉄を飛ばした。わだつみというわだつみが余を讃え、余の魂となって地球が送ってよこした二六〇〇年の恥辱をはらい清めたのだ。わしがいなかったらどうなった。
皆、仲間同士で殺し合い、死に絶えておるじゃろうに。
───
いいえ、あなたの祖霊はみなレーダーで監視され、動きしだい撲殺されました。そして核融合反応の高速でふくらむただひとつの無神論をあなたに知らせました。あなたがお気付きのことと思っておりましたわ。
───
違うあれはわしの神風が吹きあおったのだ。一億が望んだのはヒロシマの神風じゃ。おお偉大なる言葉じゃ、わしがそれを沐浴みするやいなや、するとどうした奴等め突然わしらを殺すのをやめおった。わしの首に手をかけて、それ処刑だという段になって、突然恐れ始めおった。見ろ、いま、わし等の風が五分五分の戦いをしているんだ。この狭い庭から吹きあがった神風はGNPという新しい呼び方はされているが、みなわしの祖霊どもが生きかえって来ている。余の悲痛な神々しさを讃え、世界中を吹き抜けておろうに。
───
全く月の石よりもものわかりの悪いひと!
───
私が判断しますにいい精霊が生まれる気配は微塵も望めない有様なのです。それは穴のあいた穴へ空嘘という空樽へ素晴しい酒を惜しげもなく注ぎ込むような大変な無駄骨と蒸発なのです。
このことは、何卒御承知くださいませ。さてこの単調なる揺れ、単調なる求愛に気が触れて神経も弛み、気心も発熱する。あなた達へのへつらい、卑しさ、賛沢、どれもみな正解だ。全くおどろおどろしているものですから、その子孫が当店に入ると正確に弛んだ筋肉の臆病になった心臓、獣染みた従属、家畜のような従順さ──。どれもこれも正確だ。だからあなた達のありとあらゆる非殺意的精神が人間を正確に人間でなくしているのだ──振り返ってはダメ!塩の柱にされるから!(退場)

〈第10 場〉復讐の夜

(夜)1子と仮面達
───
はっくしょん!
───
そこでくしゃみをしたのはふくろうカァ? 
───
そこでカァと尋ねたのは栄養失調のカラスかあ? 
───
ところであなたは誰れか? 
───
私はナショナルというものです。松下でなく、国家と民族という意味です。そうですナショナルは国民のものです。私達がよくなれば国家はよくなり、国家がよくなれば、私らもよくなるのです。全世界ナショナリスト同盟の会長です。あなたは?
───
僕は『いのちの放火犯A』といいます。すべての国のすべての放火魔達の住んでいる見えない共和国があって、ぼくらは自分達でそれを経営しているのですよ。えへん!
───
おかしいね、今日、すべての労働者は私とともにナショナルの土台をつくる、ナショナリストの筈なのですよ、あっそうか、君は失業中なんですね。少しばかり自立心が強くて、見栄と自意識のかたまりで
───
違いますよ、ぼくはですね、よく、よそん家へ火をつけて歩く人がいるでしょ。そういったすべての放火魔達が共に棲んでいる理想国家があってその中心人物『放火犯A』だと。
───
でもね君、火事を消してくれる消防署は私どもナショナルのすばらしいナショナリスト、一日一善、笹川式経営になっているのですよ。ねじれた性欲をけしかけ、沸騰させたり、火をつけたり、一家心中とかいって火事をおこしたりする人々もナショナルの下級労働者の工作する仕事であるわけです。つけたり消したりするからいいのです。つけっぱなし、消しっぱなし、どちらか一方では私の世界は成立しないのです。まああなたはどこの部署にいるのかすぐ分かります
───
ふふっ、ナショナルコンピューターでは無理です。NECも、IBMも
───
ほんとに生意気言う野良犬な人ですね
───
ほんとに頑固なゴキブリ老人ですね
───
きみ、この世で一番貧乏な男の息子のくせして
───
この世なんてあの世の一部分でしょうに、それにぼくはもうあの世でしこたまお金持なんですもの、お金なんかいらない。放火できればいいの
───
いいい?放火するにも、だってね、その時セットする自動点火装置は我社が日露戦争の時、日本帝国陸軍のために開発したものですよ
───
いいえ、ぼくのは二〇〇億年ぐらいまえにつくったビックバン装置を改良したものです。ぼくたちは日本の軍隊のようなアマチュアではない。プロ中のプロですから、この指と手と集中力で心の■■(編注:■2文字解読不可能)をひっつけてね、科学産業の力は借りない。
───
ええ、ここでは一円借りても人生全部とられちゃいます
───
そういうこと言ってるとね、O2吸うだけでも死ぬよ。ほんとに、天皇だって、おそれおおくも、我々が息させ、食べさせているんだからね
───
天皇家では食べさしてくれなんて誰も頼んだことはない。あんた方が勝手に食料を運んでくるからつきあってやっているんじゃないか!
少しもぼくらの意見は聞きもしないで!
───
君みたいのは、すぐにうちでは殺されますよ
───
世界中のすべてのニセナショナリスト達は、とくにニホンのはね。あなた達みたいな何でも商売にしてしまう人間が、一番私を嫌いなんですね
───
すべての動物はセックスが■(編注:■解読不可能)するまで死ねない。テロリストが目的物をテロルまで死ねないように。ぼくは、ぼくがこの世で燃えつきるまで死ねないのです。途中うっかり死んだり、殺されたり、死にそうになると、ぼくの国からすぐ「国民」が光の速さより速くとんできて、すぐにぼくに放火して燃えあがらせて、もとどおりにしちゃうからですが
───
でも放火は幼児誘拐と同じ凶悪犯罪でしょ? 
───
いいえ、母が子供を産むのと同じ美しく苦痛に満ちた人間の人間による人間のための人間的な美しくも残酷な仕事です
───
なぜ? 
───
なぜって、すべての人間は、いのちの火をその心に点火されてはじめて人間になるのですから、それは誰によって、あるいは何によって、いかなる『劇』によってそのエネルギィが心から心へ放火されていくかが問題なんです。
そのためにこうしていま、ぼくらがここにいるんです
───
あっ、ぼくはもう母に会いに皇居にいかなくちゃなんない
───
待って、さっさとひとりで行かないで……私もほら、こんなかっこうしてるのよね。これから天皇陛下から勲章をもらいに皇居へ行く途中なんだ。一緒に行こう、もう時間はない。
ねっ時間はとらせない。というより、この世界にキスしてる時間などはないんだが、一つだけお願いがある……私にもキスして欲しいのだ……

(A 、もどって来てキスをする)
───
ああ、あ・り・が・と・う……
私はいま私の中で燃え出したものが分かる。
燃えている。わしは燃え尽きそうだ。
さあ早く一緒に行こう、あそこへ行く。
(イク、イク、イク、けいれんして死ぬ)
───(観客に)「己が存在の証にそのはじめこの天体にそのいのちの祝祭の火を放火したのは誰か」諸君の中に「犯人」がいたらぼくはきっとそのひとの息子に違いない

(夜)2(と、またひとり老人がきてくしゃみする)

───
そこでくしゃみしたのは誰れ、近代日本歴史のくらやみをはい回るチャバネゴキブリかな? 
───
そこで吠えているのは誰れ、四谷の地下室から出てきたやせこけた野良犬かな
───
ところであんただあれ
───
わしか? ふふっ、わしはな、みつびしというものだよ
───
あのクレーンとかジェット幾とかつくってるやつ
───
いや天皇制の激しい重みを、日夜忙しい国民の代わりになっているものじゃ。すなわち神と天皇と国民は一体であるとな(くどくどと何回も聞きかえす)。要するに国体の三体一体、をば、つくり守る仕事をしている
───
ふん、日本人の血とくそと精液を外国人のおまんこの中で、日本につごうよく受精するようまぜ合わせている、ねくらな、なつかしの産軍共同体を目差す世界のみつびしか
───
すばらしい!きみはたった一言ですべてを理解するすばらしい頭脳をしている青年だ。実にそのとおり、我らはくらい息と根の国、鉄をも溶かす魂の火の国の、そして水漬く屍かばねの国、日本国の神の誕生を我ら企業は始めているのだ
───
あなたは日本国家が誕生してから一睡もしていない、そう言いたいんでしょう
───
そうです。歴史は眠らない、権力も眠らない。よく言ってくれました。カインがアベルを殺し、エデンのはずれ、ノドという地に最初の軍事基地をつくって以来、産軍共同体の暗闇には眠りというものはないのです。
軍事基地は眠らない、みつびしも眠らない。
それが我らの栄光なのです。あなたも御存知でしょうが、実際国民は年がら年中ねぼけてぶちぶちと不満を言うだけであとはずっと眠りこけていますからね、我々は国民にかわってめざしていてあげなくてはいけないのです。

この星に、とくにソビエットからのミサイルで殺されないように。
靖国法案というハンモックに入れて心ゆくまで眠るようにとゆすってあげますよ
───
大日本帝国憲法という揺りかごの方は? 
───
あれはとっておきの高級品でしてね、右翼と大企業経営の老人達専用でしてね、秘密の揺りかごで、とってもお高いんです。すべての人にというわけにはいきません。この美しい揺りかごのいいところは、神様のおとぎ話付きなんです。

そのおとぎ話なら知ってますよ。「日本国民は神である。神は日本国民である。世界中すべてのものはこの神によって生ずる。これを世界中に天皇の名によって保証する」と言うんでしょう。原爆とともに生まれた新しい日本の古い古いおとぎばなし
───
こういう古い美しいおとぎ話こそ幼い日本を育み、わしらの日本の未来をつくっていくのですよ。
でも君はほんとに何も教えないのに、何でも知っているね。
───
あのう、ぼくは有名な墓場と揺りかごづくりの職人ですよ。あえて姓名をもたないでいるだけだ。千代田区一丁目一番地にずっと住んでいるんですよ。
───
嘘言っちゃいけない。おまえみたいのが生きていることが許せない!(ギリギリ青筋たてて怒って口が聞けない。てんかんを起こして倒れる)
───
嘘じゃない!のに信じないんだな。日本人の犬殺しどもは。
あっ、脳溢血でも起したの? あれ、てんかんを起こしちまった。人殺しを集めて、人殺しをさせて殺人犯を国家的に正当化するのにわざわざ人の家の伝統や名前を使うことを考え出して宗教の儀式にまでしちまって、オレンジ色の憎いやつ(どんな人殺しももともと自然がつくるものを自然にもどしてやるだけで、それはとっても自然の良心にかなっているのに。つまらん利益のために殺すからびくびくおびえきっちまうのさ)がんじがらめになっている永久マゾヒストの集合体文化なんだ。自分らの会社のちっぽけな利益のために、療法までつくりなおして、水爆やミサイルをつくって第三次大戦の揺りかごを用意しておきながら、国民未来のためだとか、ぼくとその家族の血筋を未来永久保存するためになどと宣伝しゃがって赤ちゃん達をその気にさせる。もうぼくの父や、ぼくん家を国家体制づくりに使ったりできないようにしちまおう。(何とかする)
それっみつびしよ、余が汝の墓石となろう。さあ息を吹きかえしなさい。こうして気がついたことにはみつびしもいらない遠い世界で望んだとおりの他人になっているのだ。
───
ああっ美しい夢を見ている。ここはどこ? 風が吹いている。何かいい気持ちだ。いい臭いだ。O2がうようよしている。肺がふくらんできた。何かが皮膚をなでている。体中があたたかい。ほらここにはO2がいっぱい、さあみなさんも息をしましょう。私と一緒にさあ息を!おれは息をしている。
───
俺はずっと息を秘めて生きてきた。あのくらい歴史の闇はどこに行っちまったのか!ない!ない!ああ暗くなってきた。眠っても大丈夫か?
───
ここでなら大丈夫だ。おねむり
───
俺にもやっと揺りかごがみつかった。今迄ずっと、長い長い夜だった。ありがとう、君は……
君は最高の揺りかごづくりだ。
───
あなたはここで永眠してよろしい。あたらしいO2の揺りかごで
───
分った、たったひとつお願いがある。その……キスしておくれ(ピエタのようにキス)ああーっ、ありがとう、で、ここはとても気持ちがいい、君の住んでいる千代田区一丁目一番地かい? 
───
違います。ここはまだ番地もついていないただの海辺です。
───
そう海辺ね。ただの、ふうん、いい名前だ。タダウミ、タダウミ、今迄聞いたことがなかった。気が遠くなるほどいい名前だ。いいっ、いいっ。(エクスタシィに入って死ぬ)

(夜)3
そこでセックスしているのは日本民族のやせこけた飼犬かい?スパイちゃん
───
と乞食に聞かれて名乗るほどのバカものじゃないが、言っちゃおう。わしはね、何を隠そう、日本人の国際的アイデンティティを探りつつ日本政治の右傾化を促進するオレンジ色のずるい奴です。フジサンケイグループと申すものじゃよ。美しい神々の霊を生産システムに接続、ネットワークし、ますます労働を愛する国民の心をつくり、一つものへとあやつってはその上りで生きている。おまえみたいなフーテンの乞食じゃない。(三百人劇場をたてるときにちゃんと福田君にいっぱいお金もだしているよ。おまえなんかには一円もいやだけどね)(と言いつつ古事記の神々を早口でまくしたてる)
───
それは人工衛星の名前? 
───
違います!
───
分った分った、コンピュータ会社の名じゃないの? 
───
日本民族の集合的無意識の発展を操作し司どる神々の名前ですよ
───
じゃあ、ぼくも知っている。少し違うけど、おいうえお、かきくけこ……
───
何それ? 
───
これも神々の名前です。私をシンボルとして平和憲法を支えている集合的無意識とその神々。あ、い、う、え、お、と50コあるの。あんたらみたいな濁った奴まで入れるともっとあるよ。ガギグゲゴ、パピプペポ…… これの組合せによって世界のすべては生まれ、この調和がくずれる時世界からすべては消え去る
───
あなたも?自衛隊? 
───
うん
───
わたくしも、ミサイルをも
───
ええ、この使い方はよって
───
とは思えないなあ
───
不思議でしょう、この世界は未だ白紙です。処女の如く、私のたましいのように、手つかずで、宗教で汚されてもいなければ、あなたのような情報産業屋グループなどにもひっかき回されてもいません
───
生意気な事言うな!生意気を!たかが天皇のくせして!
───
何が生意気ですか。これでも生意気ですか? さっとキスをする。(と死ぬ)(足を洗って上げる)
───
ああ気が遠くなっていく。すべてがまっ白だ。でも何かいい気分だ。民族も国語も消えていく。ああ完全な白だ。白だ。

〈第11場〉瀕死の白鳥(M)

次々と大量自殺者の大群
ひたすら雪が降り注ぐ中
ホリゾントが真紅
もう一人の父、花道から
■(編注:■解読不可能)第一条 余は日本国統合の象徴──

ステージ奥ドアから、サングラスの男と乞食二人──
暗殺しようと走って来ると、
例のチベットの白い巡礼達、サングラスの男と、二人の乞食を殺す。

客席から息子の前に立ちふさがる母を殺す。

平和憲法の父通過し、花嫁と息子抱き合ったまま、巡礼にとりかこまれ死ぬ。

スピーカーアナウンス
「アテンション、プリーズ、こちらはビッグマザー」
───
ここにこうして、今、私の予言通り、一つの国が滅びました。よろしい、私はまほろばです。私は大変この措置を気に入りました。私は日本国の将来をやさしく見つめ直すことでしょう。ではまた、サンキュー シー ユー アゲイン

急速に幕

〈第12場〉幕上る。白いまき上げスクリーンの前

4人の白いサル達が遊んでいる。
こわれたようなTVがチカチカ
ひとしきりミニマムミュージック

花嫁と息子(歩いてきて)
───
なつかしい陽の光だ。
たしかこの辺が日本だ、ぼくが生まれたところだと思うが、ちょっと聞いてみよう『日本はどこか』

白いサル
日本?ニホン?にほん?何んの名だ?気が遠くなるひびきであるが
───
国の名だが
───
知らんな、ここじゃない(と言われ退場)
───
ああっ、そういえばそういう国がここにあったのは知っているよ、でもねお若いの、もうその国はないよ。消えちゃったよ。消えちゃってから三〇〇年は経っているよ。思い出すにも時間がかかる

巻上げスクリーン上がると、門柱のようなこ本の棺桶、AOIDACTしずかに舞う。門から次第にステージに人々があらわれる。

そのままカーテンコールへ。
退場のパフォーマンスへ。

天皇制の関するメモ

《現代神》といっても天皇だけではない。それが国家的、政治的、宗教的になるならないは別として、人類世界のあらゆるところに生まれたものであり、今もそれぞれの痕跡程度には各所に存在している。(他の例、バリ島などの)

《彼》等には、きまって俳優の起源が認められている。逆にすぐれた俳優はみな一種の現人神を図らずも演じている。というのは、神(世界)のメディアであることで現出し、五官を通じて世界の諸事物とその因果律(ドラマ)を照らし出す輝きとともにあり、その声、その身振り、動作が、時、空間を、人間の群を〈一つの悟性へ〉・〈あるいは錯乱へ〉導き、またある集団に、心的共同幻想、をサーヴィスする=人間であることであるから。

超言語の〈天皇〉というのは、その形而下としての制度としての媒介物と取り除いてみれば、それが示すものは至福の「観念」であり、それそのものはあくまで五官を通じて至福に到達する類感反応としてとらえるという意味で、政治様式というよりは、演劇の様式に類似しているし、それぞれ差異によって孤立している個が一つの共同体となることで、その発生は四次元的に同一の源におかれている。(言語の発生と同時にある演劇そのものの歴史はそれよりはるかに古いであろうが)。

それ故、それはいつも、その政治様式は国体という皮膚感覚で演鐸的言い方に帰されるのである。絶対天皇制というのは、演劇的に見れば、演劇美のもう一様相をとり出し、極端に肥大化したにすぎない。不条理劇の一つのそれであり、いわれもない世界、恐怖をそのドラマトゥルギィにしている、その頂点に唯一神として天皇をおく。そしてその天皇とは、人間として生きている神であることではすぐれた残酷観念劇ではある。なによりもその“五官(天皇自身も含む)の機関化(法的事物化)によるエロスの中央集権化”を図ったものであり、メディアを管理する媒介者達!の殺人力による〈社■の義〉(編注:■解読不可能)によってあらわされるタナトス劇の審美的な空間にすぎない。そうした審美の魅力と、演劇の恍惚とは、しばしば安易に混同されるが、それは演劇の退行をもたらす不幸である。天皇という現人神の名において呪縛し、また同じその現人神の名においてのみ解脱しうるという絶対論的なこの自同律によって、世界に赤子等の五官と関わる諸感情の生物学的鎮圧をそのシステムにしていたことでも充分である。それはエロスを国家社会主義という事物の闇におし込み、国民を“非合理故に我信ず”となることにさせていく。(極めて日本的である)。生物学的死の人工的現実のみがそこで美と救済となる。(三島由紀夫の自決など)。

研究テーマ

《ヴィグバング》
カーマの発生、死の沸騰、物質に自己模倣システムの開始=生命エネルギィと生命体の多様化、死の進化論デザインのはじまり、いまも進行中、言語の即光的くりかえしと差異とドラマトウルギィのどうどうめぐりのはじまり。
〈自己保存〉から〈自己原因〉の垂範、不在による神経症候群の誕生のはじまり、ということは、20世紀では地球上の一切が企業運動空間のものになってしまったのかな? イデの猛スピードによる即興的再生産と情報いんぺいによる「闇の振付け」の再消費システム策謀とによって、

〈地球空間〉と〈人類空間〉の関り
この我々の地球でさえ、何度となく生成死滅をくり返してきているのだ。そのたびに一点一画もとにそっくりになる風に見えるが、よく見るとやはり(あたりまえだ! )少しづつズレ、ユガミ、ミスコピィーは、あちこちに発見される。この発見の運動があればこそ毎日が楽しい人間もいるし、「世界歴史」は空間運動をもちうる。人類生存が少し変な具合になっている今日では、

《無のエクスタシ》=純粋生命───四次元 以上

stage1
三次元に与えられた処女(一目惚れる何かで)を密室に完全監禁し、発生する異変を一部始終ことごとく観察しえたとせよ↓三次元崩壊2か4か

stage2
四次元の発生───処女の消滅空間と復活空間のホモロジーさらにホモロジイの消滅。

stage3
? ............? 

stage4
? ............? 

《アクションペインテイングス》の空間
己で己が生命元素と純粋な合一を目指し、激しく格斗し恍惚となって消え果てることによって顕現する空間(生活は消え神になる)こうした無名な人達はたくさんいる中でも、イエス、ニジンスキー、ロートレアモン、ゴッホ、空海、ランボー、ボロック、観阿弥、などは有名になっているが、世界とその鏡ということでは神の無名である。祭りは、生活と神の双方に関わるがそのどちらも発生させない今日では卑猥なものだ。

○パーフォマンスは、もう少し“静か”というのは、それらの微分の因数分解、無化作業であるから、送り手と受け手が一緒である。
「意識」が「ハングアップ」(宙吊り状態)されていることから解きほぐされる。覚醒としづまり、といった意味では、儀式にちかいカタルシスをもつ。
○ラスコーの重ね描きについてその劇場の原始形而上学性。洞窟の〈ある箇所〉に集中的に何度となく古い古い絵の上に新しい絵が乗り合うように描かれる。(傷を負った動物、臨月の動物など)

a洞窟とは、「人類の潜伏場所」無意識を安じているところ(=肉体)
b〈ある肉体〉とは、そのありとある霊の沈黙をネットワークする場所としての「劇場」=アクションペインティングスサーキット、であり、なによりもそこで無に向って意識の「集中」によって意識が行為される場所もしくはいくるものステージ、さらに聖域の中の聖なる区画〈世界劇場〉のめばえ、その種子としてのパフォーマンス

《俳優の身体はふつう(心的)写像の集合群であり、「色彩、習性、身振り発生の、それらとともにある ※〈零〉空間体である。》

世阿弥の「いのち果であるとも、能に果てあるまじきなり」という空間
また───「我はこの世の終わりまで汝等とともにあり」という空間等

《一つの「劇」空間は、他のすべての一般空間が終極し尽すまでは「零」空間たりえている空間にのみ発生しうる人口空間でなければならない》

世阿弥「鬼、大和のものなり、厳に花の咲かんが如し」

また、ピータブルック「なにも無い空間」───「我は全天体とともにこの世が滅びたところに汝等を待てり」等、

《また一つの「劇」空間は、それ自体が空間ではないときのみ他のすべての一般空間を内包しる絶対空間たりえる》

「大和の国は『まほろば』なり」大和武尊

「───『我が国』はこの世のものならず」とか

○光を支える嘘のエネルギィー圏とか、みつめられると動き出すなにかしらの一切とか、いつも泣き虫は、人類(史)の涙に(内)介在し、しばしばふいに不条理な殺戮を勃発させる「嘘の空間」の「涙の爆発」の諸様相の回路を観察すること、その嘘、無の策謀を究明することの愉しみ───「誌人の特権」

“人間空間”という命題=この抽象運動体、そして類感反応そして類感波動の差異とくり返しのトートロジイとそのエントロピー世界(神経症候群)を一つ一つ数え、データをとることもまた愉しみである、───「俳優の特権」のドラマ(体)───「呼吸」と「脈搏」と「脳脈」による

───では再び、俳優という命題、彼の身体は意味と無意味を無限大に合わせもつ、で、たえず精霊に満ちあふれ、世界に自己再生をたいへんなスピードで1/1回、1/√2回、1/2回、もしくは1/3か1/4回づつ無限界行けうる筈である。

この世を交えるいくつかの写像たとえば〔〈神〉〈飢餓〉〈権力〉鏡、道化、王(真理)(役者)(観客)〕生産消費、利潤、搾取の入れ換え運動

何のために? 人間空間をスムーズな空間にするため。

よって、いつも世界の活性化というそれ自体のぞましい役割りを担う積極的な人物には異贋の二領域を股にかける自由奔放な跳躍者という。ほとんど直下的な性格と(俳優)普通的に有している。
すべての動詞が適用されるが、そうすると何も定義しないのは美しい。

○空間とは自ら空間を発生する空間である。
空間とは自ら分裂を発生する空間である。
空間とは自ら融合を発生する空間である。
空間とは自ら変容を発生する空間である。
空間とは自ら消滅を発生する空間である。
空間とは自ら空間にたえず空間な空間である

トートロジイ的結論

○零空間とは自らの内にも外にもいかなる空間も内包してない空間のことである。

○絶対空間とは、いかなる空間も内包している空間のことである。

○一般空間とは、零と絶対の間のどれでもない空間のことである。

○特殊空間とは、一般空間のどれかが、劇空間によって理由やエネルギィや変化を与えられている場合の空間のことである(トリックスターの出現なども含む)

○時間とは、〈空間間差異〉の変ぼうである。
一般宇宙(複合空間)とは、生命科学的には、絶対空間の心理的漸近体のことである。
(単一空間はそれ自体いつも無空間である)

○「劇」空間とは、零空間と絶対空間をたえず自が二極性とする不可能性の空間である。(非物理空間)

○特殊古典的「劇」空間例

1 (神学空間)(企業空間の形而工学)宇宙エネルギィに人間が寄生している。宇宙エネルギィは一粒子にすぎない。


2 又、人間に宇宙エネルギィが寄生している。したがって神は、人間に寄生しているしらみを支える一粒子のようなものである。(道化空間)(政治空間)


3 人間は人間をエネルギィにしようとしているが、人間にからみつき、(死者さえ)寄生し合う以外生存できない。(社会空間)物質拡散の原理と運命共同体の伸縮性。


4 「すべての生物」は死に抗しえない。この自己原因から人は愛し合ったり、自殺したり、殺し合いをし、絶えず逃がれえぬ原因に無意味で、はかない抵抗をなす。そこではじめから死を一体化、生命への不可能性空間を設け、それ以外の一切に沈黙し続ける霊的な「嘘の自己原因」の必要を考えついた人々の技法がつくり出す。(文学空間)


〈情報空間とは、俳優不在の俳優空間であり、何一つ自らは自己原因をもたない無意識を運動し、運動される側に意味を再生さす空間〉

それゆえ、天皇もまた一つの情報(空間)にすぎない。自律不能のエントロピイ空間である。がゆえに生物体の融合能力をなりうる。


〈記憶喪失空間〉とは、情報侵入不可空間であり、天皇空間(記憶情報)の相似象である。それゆえ、“白痴”は天皇の上位に入る空間である。


《無意識とその世界における二つの措置》
見えざる母の「ワギナ」=見えざる父の「ペニス入れ」集合するペニス達。
あるいは自己去勢されるペニス達のペニス入れめぐり
ドン・ジュアン、光源氏など
見えざる父の「ペニス」と、そのために集合する「ペニス入れ」達、あるいは「ワギナ入れ」づくりとワギナ達。真のペニスを求め、永久処女をのぞむ「ペニス入れ」すなわち、すべてのペニスに開かれるいけにえ的自己浄化とその「ペニス入れ」など───
点領区域では売春婦達が共同体の危機を救う。

《恍惚の空嘘学》
光の深淵を支える嘘のエネルギィー空間圏、又父と子と精神達、の三位一体

イエスの内に秘むやさしさはアナキズムと涙の系譜でもある。この世の終わるまでこの世の愛情エネルギーのすべてを無化し、空嘘とすることに成功した(日読の命)男など

《魅力・魅惑》=のっぴきならなぬ波動・磁力、もしくは大脳への光の粒子の拡散干渉というべきもの

《高速で膨張収縮する魂の潮汐能力とその目盛付》

───古代の無文字近代圏の言葉や礼義やセックス、宇宙文化
《20Cになって行動心理学によって「本能」が精神現象学によって「観念」が、号生物学によって「自然」、が経済学によって「祭」が空間美学によって「時間」が否定され、無化された》ことについて

さて、では、本能、観念、自然、祭、時間、こういったものは人間にとって人間を遠避け、隠す、幕もしくはカーテンのテーマであった。すべてそれらが零空間たりえるというまでに我等の絶対空間は調べ尽きれたともいうのだろうか。否、実際は単に一般空間が少しばかりふえただけである。

これまでは神を否定するあまり人間の自己原因も仇敵にすぎたためにかえって過剰分割情報データをつくったにすぎないのか。たしかに大脳の脳幹部分(コンピュータ的一階)と新皮質(イデー4階)の関係だけはこれで少しあきらかになってきているが、辺緑系(3階)とR領域(2階)(これらが一番やっかいだ)は、ほとんど100年位ずっと無視されすぎてきている。だからまたまた辺緑毛とR領域が強い我が国では、いろいろなオカルトを含む、宗教法人が情念再生産のパフォーマンスとなってとんでもない勢いではびこってしまっている。これは我々から世界を遠避けるブラインドになりかねない要注意!

「人間は未だに秘密の事物である」ボランシャルな、かつ秘密にみちた人間の、存在エネルギーとその存在パフォーマンス体系空間

有史以前以後を問わず、《大脳感情》の中にいつも生き続けている《愛の同時刻圏》空間についてもう少しじっくり考えよう。

○でないと“ああっ またしても我々は墓地の中で草を喰らい続けるはめになる”「死者の扱い」のうちに「死の決め手」は奪われ、「死の確認」にも定かならぬまま、永久に誰かのものとも知れぬ「死体かたづけ」をさせられ続けてしまうだろう。おまけに、いつもこういったことは、不渡り手形となった自己を背負いつつなのだ!

○死を決定し、死体を確認し、死体をかたづけ、復活の準備がかすかにみい出される、あるいは死の不在がなされようとする力とは、その普通的感情とは何か。


このページトップへ